「コロナ下、国内死者、2年で17万人増加 同時期のコロナ死者数(5万4000人)の3倍」という、朝日新聞の記事が、1面・2面(5月6日朝刊)に。 「感染拡大後、地方で増加めだつ」 これは、ほしかった記事だ
コロナ下、国内死者、2年で17万人増加
同時期のコロナ死者数(5万4000人)の3倍
という、朝日新聞の記事が、1面・2面に。
感染拡大後、地方で増加めだつ。
これは、ほしかった記事だ
昨日の朝日新聞朝刊。
見出しは、この報告の見出しとは異なり、
「コロナ下 国内死者13.5万人増
感染拡大後、地方で増加めだつ
流行前水準比」
というもの。
1面のトップ記事につづけて、掲載されている。
(※このレポートと、新聞で、見出しが異なることについては、あとでふれます)
「時々刻々」の記事として、さらに2面いっぱいをつかった、充実した記事だ。
ウェブでは、有料記事(そのため、上記の画像は、記事本体の大部分を消している)。
コロナ下、国内死者13.5万人増 感染拡大後、地方で増加めだつ 流行前水準比
https://www.asahi.com/articles/DA3S15629481.html?iref=mor_articlelink02
(時時刻刻)間接的にもコロナ禍の影 循環器の病気や老衰、増えた死者
https://www.asahi.com/articles/DA3S15629410.html?iref=pc_shimenDigest_sougou2_01
「朝日新聞の有料契約がないかたは、近くのコンビニに買いに行かれることをおすすめしたい」と、この紹介のレポートを書きはじめてみたものの、この報告の公開は、記事の翌日になってしまった。
つぎのような内容が、記事では、たしかな検証をへて書かれている。
①コロナ下の超過死亡数の実情はどうか
②超過死亡数が、大幅に「コロナ死者数」を上回っている理由はなにか
③感染拡大後、地方で増加めだつ。その理由はなにか
1面の見出しの「地方で増加めだつ」は、そうだろうと思っていた。
このことをはっきり書いたことだけでも、ありがたい。
②についても、そうだろうと思っていたことが、はっきり書かれている。
この3点について、もうすこしのべたい。
①については、はじめに、お気づきと思いますが、このレポートの見出しと、朝日新聞の見出しが異なることについて、のべておきたい。
朝日新聞は「コロナ下 国内死者13.5万人増」と見出しをたてた。
わたしは、「コロナ下 国内死者2年で17万人増加」とした。
朝日記事によると、年ごとでは、
①2020年の死者は、予測より約3万5000人、少なかった。
「コロナがまだ広がっていなかった一方、マスクの着用や外出自粛が進み。インフルエンザの流行が抑えられるなどしたとみられる」
「しかし、感染が拡大した」ため、
②2021年の死者は、予測より約5万2000人、上回った。
③2022年 〃 は、 〃 約11万8000人、多かった。
そのため、わたしのレポートでは、2021-22の2年間について
「国内死者2年で17万人増加」
としたものです。
これは、発表日ベースでみたコロナ死者数が、累計で
2020年末時点: 3459人
2021年末 〃 :1万8385人(1万4926人増加)
2022年末 〃 :5万7266人(3万8881人増加、2020年末から5万3807人増加)
となっているので、
17万人÷5万3800人≒3.16(倍)
と考えて、コロナ死者公表数の約3倍、としたものです。
すこし前に、2022年の日本の超過死亡数が「約11万3000人」という記事を見たことがある方もおられるでしょう。
それは、2021年10月1日から、2022年9月30日までの人口推計にもとづいた、超過死亡数です。
国勢調査が5年ごとの10月1日なので、この日付の幅で集計されています。
それにたいし、きのうの朝日新聞で、2022年の「予測死者数との差」として、しめされているのは、
1.2022年1月から12月まで
2.「超過死亡数」から「過少死亡数」を差し引いた
という、2つの点で、先日報道された「超過死亡数」とは異なっているようです(注*)。
*他にも、異なる点があるかもしれない。
ちなみに、2019‐2022年の死亡者数は、
2019:138万1093人
2020:137万2755人
2021:143万9856人(以上、確定値)
2022:158万2033人(速報)
なのだそうです。
2022年の死亡158万人超、戦後最多 コロナ余波も〈日本経済新聞2月28日〉
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA277KO0X20C23A2000000/
ここからは、ここまでのデータからみた、門外漢のおおざっぱな仮定にもとづく計算になりますが、
各年の12月第3週までの過少死亡数は、厚労省サイトで見ることができ、
それを、各都道府県別でみて集計すると、
2020:5万2997人(超過死亡数:1万5676人)
2021:1万2485人
2022: 5114人
なので、誤差はあると思いますが、この人数ぶんの過少死亡が織り込まれてると考え、
それぞれ、
2020年:139万2000人
2021年:140万人
2022年:146万9000人
という死亡者数の予測がなされていたと、おおざっぱに考えて、死亡者数の増加率を推定すると、
超過または過少死亡数が
2020:▲3万5000人
2021:5万2000人
2022:11万8000人
というのは、死亡者数が、予測とくらべて、
2020:▲2.5%
2021:+3.7%
2022:+8.0%
ということになりますね。
もし、国立感染症研究所と同じように、超過死亡数から過少死亡数を差し引かないで考えれば、死亡者の予測との差は、さらに高い割合になるはずです。
つぎは、②です。
上記の朝日新聞記事は、有料記事なので、1~2面のうち、1面の内容を紹介するにとどめ、2面はほんのすこしにしようと思いますが、1面だけでも、簡潔で、情報量が多いです。
超過死亡には
「コロナで亡くなった人」のほかに
「コロナに感染したことで持病が悪化」した人や
「長期の自粛で衰弱」したり
「医療逼迫や受信控えのために必要な治療が受けられなくて、亡くなった」りした人が
多くいたとみられる。
というのです。
死因別には
「肺炎などの呼吸器の病気」
「老衰」
などの増加が顕著だった。
そして「地方で増加めだつ」として
「人口あたりの死者は、都市部よりも、地方で多くなっていた。
医療体制が都市部より脆弱で、高齢化率も高かったことなどが影響したとみられる」
「香川や佐賀などは、2021年までは少なかったのに急増。
3年間の累計では、宮崎や高知、富山が高かった」
というのです。
1面だけでも、この内容で、2面はさらにくわしい。
2面に、県ごとの超過死亡が、週単位で図示してあります。
2022年、とくにその後半に、地方での死者増加が、めだっています。
(このレポートでは、紙面をカラーでしめしていないので、わかりにくいかもしれません。
実際の図をみると、このことがよくわかります。
図のいちばん右側の12月末に、もっとも赤色が濃くなっていて、年末の最終週に、最大の超過死亡があって、今年をむかえることになったことが、みてとれます)
つぎに、この朝日新聞の記事とほぼ同一と思われる、計算をしてみましたので、その表をのせましょう。
記事1面の最初にある、この図のもととなっていると思われる、データをさぐってみました。
4月19日の「第121回新型コロナウイルス感染症アドバイザリーボード」の「資料3-2鈴木基先生(国立感染症研究所)提出資料」から、この表(左側の4列)は、作成しています。
この表の左から2番目の列が、朝日新聞の1面のこの記事のいちばん上にある地図の色分けと、ぴったり一致していますね。
「予測死者数との差(2020~22年の合計)都道府県別。人口10万人あたり」
https://digital.asahi.com/articles/photo/AS20230506000268.html
コロナ第8波のピークは、2022年12月と、それを上回る2023年1月でした。
そこで、2023年1月の「予測死者数との差」を、上の表にくわえています。
すると、地方の県のなかには、この月だけで、これまでの合計の1割5分から3割近くもの「予測死者数との差」が生じているところが少なくないことがわかります。
2022年末時点までに公表された、コロナ死者数も、表の右側にそえました。
コロナ第9波がきて、第8波をしのぐ波になる可能性が指摘されています。
その被害をもっとも受けるのは、なによりも地方県(の高齢者)なのでしょう。
知事さんたちも、懸念の声をあげています。
コロナ5類「移行後」、複数の知事が懸念 入院対応に難色示す病院も
https://digital.asahi.com/articles/ASR4W5QW8R4SUTFL011.html
コロナ5類移行後の医療機関、確保は 知事の4割「わからない」
https://digital.asahi.com/articles/ASR4W563TR4WUTIL01G.html
わからない、って。
有名知事では
小池百合子知事(東京都)、鈴木直道知事(北海道)……無回答
吉村洋文知事(大阪府)、斎藤元彦知事(兵庫県)、大村秀章知事(愛知県)、玉城デニー知事(沖縄県)……わからない
などといったところ。
アンケートには、つぎのような質問もあったようだ。
〈アンケートでは「新たな感染症への備え」についても聞いた。「備えは十分か」の質問に、「十分」(2人)、「ある程度十分」(29人)があわせて7割近くだった。
一方、「不十分」(2人)、「やや不十分」(8人)も2割を上回った。この10人に複数回答で理由を選んでもらったところ、「医療提供体制」が7人で最多だった。その後は「行政のDX化」が6人、「国と都道府県の連携」「ワクチンの開発・確保・接種」「財源の確保」が各3人と続いた〉
とあるが、「ある程度十分だが、ほとんど不十分」だったり、「やや不十分だが、ほぼ十分」ということだって、あるんじゃないか。
苦肉の策が透けるような、アンケートに見える。
「ある程度、クレオパトラに似た絶世の美女だが、鼻が低かった」とか、
「ある程度、大谷翔平は完全試合の投球をしたが、打ちこまれて敗戦投手になった」
とか、どうなのか。
「ある程度、髪が生えている」ひとと、「いくらか禿げている」ひとは、どちらの髪が薄いのか。
どう思いますか。
最後に、さきの「予測死者数との差」の、地図や表をみると、滋賀県と三重県を除く、関西の「超過死亡」が多いことがわかる。
この地域は人口が多いので、大阪をはじめとして、多くの死者を出した。
これらの県も、人口あたりの死者数の超過割合が高いことも、ゆるがせにできないですね。
朝日新聞の紹介が、多くなった。
このへんで、きょうのレポートを終わりにしたい。
なお、2021年の超過死亡については、朝日新聞に、つぎの記事がある。
「2021年の国内死者、想定超える 新型コロナによる医療逼迫影響か」(2022年5月22日)
https://digital.asahi.com/articles/ASQ5P5KC6Q5NUTFL019.html
*その他の関連記事
「平均寿命、10年ぶりに縮む 女性87.57歳、男性81.47歳 コロナが影響」(2022年7月30日)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15372786.html
「令和3年(2021) 人口動態統計(確定数)の概況」(厚生労働省2022年9月16日)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei21/dl/15_all.pdf (PDF)
「年齢調整死亡率(人口千対)は男 13.6、女 7.4 で、男女とも前年の男 13.3、女 7.2 より上昇した」
2021年に、さがってきていた死亡率があがり、あがってきていた平均寿命がさがった。2022年の結果は、どうでるだろう。