安倍晋三元首相の後継候補・吉田真次さん! ! これは、ヘイトスピーチではないですか
安倍晋三元首相の後継候補、吉田真次さんが
ヘイトスピーチ解消法が成立した日にあるブログに書かれた
文字通りの、デタラメな「糞記事」(←糞尿が出てきて下品)にもとづいた
フェイスブック投稿をしているが
これは「ヘイトスピーチ」ではないですか
という話。
フェイスブック投稿の内容については
このレポートの、後半で、紹介しています。
***
安倍元首相の山口4区候補者・吉田真次さんの、安倍さんの地元下関市での右翼議員活動のようすについては、すでに、いくつかの記事が出ている。
デイリー新潮(2月7日)
〈安倍元首相の後継者になった38歳「下関市議」の評判 「日の丸ボーイ」と呼ばれていた思想・信条〉
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/02071101/
女性自身(4月13日)
「山口4区補選 安倍元首相の後継候補の“外国人の人権”巡る過去投稿が波紋」
https://news.yahoo.co.jp/articles/f37828ebb0510a2b41474fcc29c29f8261527075
リテラ(2月15日)
「山口補選トンデモ候補は家系図アピールの岸信夫息子・信千世だけじゃない! 安倍元首相の後継は“安倍以上の極右”」
https://lite-ra.com/2023/02/post-6262_3.html
「女性自身」から、引用する。
〈問題の発言は、吉田氏が2016年10月にツイッターに投稿したもの。
《最近、外国人であることで差別されたという報道が目立つが、悪意や差別という意識がない言動にそこまで過剰に反応することはどうなのか。安倍政権が、移民政策を推進し、人権擁護法などを成立させるような政権でなくて本当に良かったと思う》
外国人が日本で働いて技術を学ぶ外国人技能実習制度があるが、国際貢献の目的から離れて労働力確保の手段になっている実態や、賃金未払いや不当解雇といった問題が絶えない。こうした事態を受けて、先日、政府の有識者会議では制度を廃止し、見直す方向で検討していくことが発表されたばかり。
6年半以上前の呟きではあるが、こうした外国人を巡る環境面での問題があるなか、人権擁護などに異議を唱えていた吉田氏。山口4区は安倍元首相の選挙区だったこともあって全国的にも注目度が高く、吉田氏の投稿が選挙に際し話題となり、ツイッターでは「山口4区補選」が一時政治部門でトレンドワード入りするほどに。〉
これは、2016年10月11日のツイートである。リテラに先にとりあげられたものだが、これを読んで、筆者は「最近、外国人であることで差別されたという報道が目立つ」とあったので、どういう報道をみて、こんなツイートをしたのかに、関心をもった。
この年は、ヘイトスピーチ解消法が、自公から参議院に発議され、修正がなされたのちに、5月13日に参院本会議で議決され、同月24日には衆議院本会議で可決・成立した。
発端は、2013年3月に、有田芳生・参議院議員を中心に、議員有志がひらいた、ヘイトデモに反対する院内集会にあったという。その後、NGO・人権団体の取り組みが展開されて、報道も活発化し、人種差別撤廃法上の義務不履行にあたり、問題だという認識がひろまる。
5月には、国会質疑で、谷垣法相・安倍首相が、ヘイトスピーチなどについて問われる。
〈谷垣禎一法相は、「日本は品格ある国家をめざさなければならない、また成熟した社会をつくらなければならないとき、新大久保や鶴橋でのそういう行動は真っ向から反するもの」「ヘイトスピーチだけでなく、インターネットを見てもいろんな言論が行われているのは事実」だと認め、「憂慮に堪えない」と述べました。〉(9日、参院法務委員会、有田質疑に答えて)
〈これに先立つ5月7日の参議院予算委員会で、鈴木寛議員(民主党)が安倍晋三首相に同様の質問を行いました。安倍首相は「一部の国、民族を排除する言動があるのは極めて残念なことだ」と述べています。〉
(上記の2つの国会質疑の紹介は、ヒューライツ大阪のニュース・イン・ブリーフより)
8月には自公与党の取り組みもはじまる。
翌2015年には、野党案が発議されるが、継続審議になる。
他方、与党案の検討もはじまる。
翌2016年3月、自公共同のワーキングチーム設置。同月には参院法務委員会の参考人質疑、現地視察、4月には政府質疑がなされた。同月、与党案が発議される。
その後、修正をへて、5月24日に可決・成立した。
この5月24日、「日本人客に糞尿を食べさせる…韓国のレストラン従業員逮捕」というブログが、「淫夢新聞社」という名で、書かれている。
これについては、あとで。
この「ヘイトスピーチ解消法」成立後の成果が、いくつかでてきはじめたのが、吉田真次さんの、さきのツイートがされた、2016年のこのころだったようです。
ツイートがされた10月11日(火曜日)に先立って、2つの判決がでています。
○9月27日(火曜日)
「在特会のネット上のヘイトスピーチ、「人種差別」と認定 大阪地裁」
〈桜井氏の一部発言について「在日朝鮮人に対する差別を増幅させる意図で行われた」として人種差別と認定、在特会と連帯して77万円を支払うよう命じた。〉
https://www.sankei.com/article/20160927-Q2BSB6GKX5JLFMMMAY46GCJAFQ/
○10月7日(金曜日)
〈在日韓国人を中傷するビラを貼る目的で福岡市の商業施設のトイレに入ったとして、建造物侵入罪に問われた同市の無職男(64)に対し、福岡地裁は7日、懲役1年、執行猶予3年(求刑・懲役1年6月)の有罪判決を言い渡した。〉(読売新聞)
「安田浩一ウェブマガジン ノンフィクションの筆圧」にも、つぎの記事がある。
〈福岡ヘイトビラ事件 判決にみる「差別事件」として踏み込まない司法と「謝罪と反省」の方向の曖昧さ〉
〈今回の裁判が全国的にも注目されたのは、6月に法施行されたヘイトスピーチ解消法が同事件に一定の存在感を与えたと見られるからだ。
地元記者によれば、福岡地検は起訴時に、建造物侵入容疑という軽微な事件としては異例ともいえる“記者レク”(司法担当記者を集めた背景説明)をおこなったという。そこでは担当検事が「新法ができた情勢にも照らし、悪質と判断とした。こうした趣旨の起訴は全国でも珍しい」などと話した。
さらに論告でも検察側はこの事件を「社会全体として本邦外出身者に対する不当な差別的言動を廃絶しようとしている現在の情勢に逆行するものだ」と指摘している。
であればこそ、判決でもヘイトスピーチ問題に踏み込んでほしかった。〉
(このあとは、記事参照)
https://www7.targma.jp/yasuda/2016/10/10/post696/
これらの判決と、このツイートが、どう関係しているかを、断定できる材料があるわけではないが、こうした判決がでできた時期に、吉田氏の上のツイートがなされたというのは、これらの動きと考え合せると、気になるのである。
ところで、吉田氏には、それに先立つ10月4日に、つぎのフェイスブック投稿がある。
「HOM55」さんのツイートが、これを伝える。
山口4区から出馬した自民党の吉田真次。彼のFBで衝撃的な文言を含む投稿を発見しました。
— HOM55 (@HON5437) 2023年4月17日
「日本人客に糞尿を食べさせる人がいる国」って・・。
当時、寿司店で外国人観光客に使うワサビの多さが問題視されたので、それを念頭に置いた投稿だと思います。
この表現はあり得ないでしょ・・。 pic.twitter.com/ja1rv6xTSG
「これからは寿司職人は握る技術に加えて、顔を見てわさびの量を判断しなければならないのですね。
日本人であっても外国人であっても、多くても少なくても文句を言われるのは大変だ。
ひと言、客が言えば済むのだろうけど。
ただ、わさびが好きな外国人が多いからと、その量を多くしたことについて差別されたと憤慨することが理解できない。
日本人客に糞尿を食べさせる人がいる国ではそう思うのかもしれないが。」
前々日、この寿司屋のことで、つぎの報道があった。
「市場ずし難波店 外国人観光客に"わさびテロ"? 運営会社が事実認め釈明」
https://www.huffingtonpost.jp/2016/10/02/ichiba-sushi-wasabi-terro_n_12298186.html
〈大阪中心部の寿司店「市場ずし」で、店員が外国人観光客にわさびを大量に盛るなどの嫌がらせをしたという指摘がネット上で相次ぎ、運営会社が10月2日、公式サイトで釈明した。
問題になったのは、大阪の繁華街・ミナミにある「市場ずし」難波店。
9月ごろから、韓国のポータルサイト「NAVER」の旅行掲示板で「わさびテロに遭った」という書き込みが相次いでいた。
運営する「藤井食品」(大阪府茨木市)は10月2日、店員がわさびを多く入れていた事実を認め「海外から来られたお客様からガリやわさびの増量の要望が非常に多いため」と釈明した。民族差別的な発言については否定した。〉
この件の報道や、内外での反応を受けて、このフェイスブック投稿がおこなわれ、この件で「差別されたと憤慨することが理解できない」、そして11日のツイッターで「悪意や差別という意識がない言動に、そこまで過剰に反応することはどうなのか」と書かれるのである。
さらに「日本人客に糞尿を食べさせる人がいる国ではそう思うのかもしれないが」と。
これについては、後述。
吉田さんが安倍さん後継として立候補している山口4区では、有田芳生さんも立候補し、吉田候補との議論を望んでいるが、選挙期間最終日にいたるまで、実現していない。
有田さんは、せめて、吉田さんの意見を聞きたいと、3項目の質問状を送る。
「統一教会問題について」「北朝鮮拉致問題について」につづいて「人権問題について」。
山口4区補選。いよいよ「3日攻防」となりました。自民党の候補者は私の公開質問状に回答しませんでした。「週刊文春」の質問にも無回答。争点を隠したまま投票日に向かう。予想どおりです。 pic.twitter.com/0RSaYb5dct
— 有田芳生 (@aritayoshifu) 2023年4月20日
つぎのとおりだ。
〈貴殿は、2016年10月11日、「最近、外国人であることで差別されたという報道が目立つが、悪意や差別という意識がない言動にそこまで過剰に反応することはどうなのか。安倍政権が、移民政策を推進し、人権擁護法などを成立させるような政権でなくて本当に良かったと思う」とツイッターで投稿されています。しかし「悪意」や差別の「意識」がなくとも基本的人権を阻害する「効果」があれば差別にあたることは、わが国も加入する人種差別撤廃条約の精神から明らかです。貴殿の投稿は、人種差別撤廃条約の精神に真っ向から反するものと断じざるをえません。この件についての見解を求めます〉。
と、誠意ある回答を求めた。回答期限を19日(水曜日)までとしたが、答えはない。
この吉田さんのフェイスブックは、わたしには、よくわからない。
「これからは寿司職人は……顔をみてわさびの量を判断しなければならない」
⇒いや、顔を見てわさびの量を判断してきたことが、問題にされている。
そんなことはやめよう、という、問題の核心を全く理解していない。
「日本人であっても外国人であっても、多くても少なくても文句を言われるのは大変だ」
⇒「(事件後)難波店ではお客さま全員にわさびを別皿に分けて提供するようにしています」と、日刊ゲンダイにあるように、そうすれば、文句をいわれないのでは? 文句を言われない容易な解決策があるのに、ことさらに、差別を批判する韓国人のクレームを批判する。
「ひと言、客が言えば済むのだろうけど」
⇒こうして、問題を「客側」(差別を訴える側)にあるかのように、そらすのである。
「ただ、わさびが好きな外国人が多いからと、その量を多くしたことについて差別されたと憤慨することが理解できない」
⇒外国人には、食べられない量のわさびが乗った寿司が、一律に提供されたのである。それを歓迎する外国人もいただろうが、食べられない外国人もいた、という現実。
そういうことを、一律に、自民族にたいしてなされれば、怒るよね。自民族にたいしてなされる差別と、それへの怒りを理解できないのだ、この方は。
⇒店員の民族差別発言があった、という抗議もあったが、無視をきめこむ。
「日本人客に糞尿を食べさせる人がいる国ではそう思うのかもしれないが。」
⇒吉田氏は、こうして根拠のないガセ記事をもって、韓国人を非難する。
これは、ヘイトスピーチ解消法成立の日に、ネットに投じられた最悪の「ガセ、ヘイト」記事を、鵜呑みにした、最悪のコメントだ。
外国人といっても、民族によって好みは異なる。
そして、個人によっても、好みは異なっている。
中国人の「わさび」の量の好みの報告は、ネット上で、見られる。
そういう傾向はあるのかもしれないが、個人差もあろう。
韓国人の「わさび」の好みは、好むという人もいるが、好まない人も多い。
市場ずし難波店は、それを十把ひとからげに、外国人の好みとくくってしまった。
それに対する吉田氏のフェイスブックは、ガセ記事をもとに、韓国を「日本人客に糞尿を食べさせる人がいる国」とした。これは、ガセ記事に依拠し、根拠のない「個別事象」を、韓国人という「民族一般」に拡大している、二重の間違いをおかす発言である。
発言のレベル(性質)が、「わさびテロ」と同じに見える。より悪質にも思える。
ガセ記事による「十把ひとからげ」の乱暴なヘイトスピーチ。
ヘイトスピーチ解消法にいう「本邦外出身者を著しく侮蔑する」発言だ。
下関は、隣国である韓国・朝鮮との窓口だった。そこからは、有田さんの言うように、文鮮明も来日した。統一教会の霊感商法や、帰依した信者たちが生活と家庭を壊すまでに搾りとられた多額の財産が、韓国の教会本部に、ここを経由して運ばれてきた地でもある。多くの支援議員も生み出してきた。けれども、そこは、ゆたかな文化と人間の交流の窓口でもあった。そこは、もっともヘイトスピーチをゆるしてはならない地であるはずだ。
吉田氏は、隣国人の行動に「日本人に糞尿を食べさせる」という、根拠なき意図的な作り話を盛ってしまった。その国からの来訪の窓口である、下関という地を代表する政治家として、ふさわしいかどうかが、大いに問われる。
吉田真次氏のブログに、こういうくだりがある。
〈私は「ノイジーマイノリティに惑わされることなく、サイレントマジョリティを汲み取れ」ということを政治信条としています。〉
このことばには、発言するマイノリティを軽視する姿勢が見て取れる気がしていた。
ですが、こうも思う。
こうした、ネットの極端な右翼的なガセサイトを信じるのは、ネット世界の極右「ノイジーマイノリティ」の意向を汲み取って政治活動をしてきたということではないのか、と。
市議という立場では、日の丸掲揚、育鵬社教科書の採用など、極右派の主張の切込み隊長のようにみえる吉田氏だが、たとえば、モリ・カケ問題を、ただ根拠のない批判と言ってみたりするのをみると、根拠を示した批判がブログではなされていないようだし、地元にいながら、右派の動きを後追いするように、そうした発言がなされているにすぎないようだから、極右派の動きに呼応する若手、というのが、その役回りだったのでは、と思った。
有田さんとの議論・対話が実現していれば、吉田さんの主張が、どのくらいの深さのものかがわかっただろう。
この吉田さんのフェイスブック、ツイッターの発言は、ヘイトスピーチ解消法成立日のガセ記事を韓国人一般の属性であるかのように語る。それを、与野党間の意見の違いのあるなかで、ヘイトスピーチ解消法の成立に向けて、努力した有田さんとくらべてどうなのだろうか、ということを、今こそ考えたい。
最後にそう述べて、このレポートを終える。
※「日本人客に糞尿を食べさせる…韓国の従業員逮捕」のブログ、および吉田真次氏のフェイスブックについては、この記事にも言及がある。
https://sssooocccooo.hatenablog.jp/entry/2023/04/18/125243
※淫夢新聞のこの記事を信じてツイートした、鈴木麻理子さん(当時、日本のこころ。のち自由党)のいきさつについては、つぎのサイトがある。この件が炎上して、鈴木さんは強い批判を浴びるなか、淫夢新聞は、記事削除だけでなく、ブログを閉鎖することになる。
吉田真次候補のフェイスブックへの書き込みの、2月後の12月のことである。
https://togetter.com/li/1063084