山口県の第1の都市・下関。 下関市の人口減少は、2015~2020年で、人口20万人台の都市のうちでワースト3位だった。 人口の社会増減が、地方創生とアベノミクスの成功の指標であるなら、 下関市の人口減少は、安倍晋三首相の地元でのそれらの失敗を物語る。

山口県の第1の都市・下関。

下関市の人口減少は、2015~2020年で、人口20万人台の都市のうちでワースト3位だった。

人口の社会増減が、地方創生とアベノミクスの成功の指標であるなら、

下関市の人口減少は、安倍晋三首相の地元でのそれらの失敗を物語る。

 

安倍晋三首相、地方創生の成功事例として、江津市の人口の社会増を、施政方針演説(2020年1月)でとりあげる。

 2020年1月20日安倍晋三首相は、地方創生政策の成功事例として、島根県江津市をとりあげました。

「東京から鉄道で7時間。島根県江津市は「東京から一番遠いまち」とも呼ばれています。20年以上、転出超過が続き、人口の1割に当たる2800人が減少した町です。

 しかし、若者の起業を積極的に促した結果、ついに、一昨年、転入が転出を上回り、人口の社会増が実現しました」

 https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2020/0120shiseihoushin.html

 

 この発言については、政治学者・菅原琢氏がその誤りを明晰に論証しています。

 つぎのブログ記事です(国会議員白書ブログ2020.1.28)。

「安倍首相演説:島根県江津市の転入が増えたのは若者の起業促進策が成功したからでなく〇〇〇〇のため」

 http://blog.sugawarataku.net/archives/202001-1.html

「政府統計を分析すれば江津市において若者の起業促進が社会増をもたらしたと述べることはできないことがわかります。以下、これを3つの図表により指摘しています」

 というものです。

 これと同様の分析を、筆者もブログに書いています。

 社会増をもたらした、ある高校の寄宿生たちの人口の把握の過程に、さらに統計から迫ったものです。

 こちらをお読みいただけるなら、要旨から先に読むのがいいかもしれません。

nanijiro-i.hatenablog.com

nanijiro-i.hatenablog.com

 よろしかったら、菅原琢氏のブログだけでも、お読みになると、この発言の誤りを、すぐに、おわかりになると思います。

 そんなふうに、この安倍晋三首相の発言は、眉唾ものなのですが、ここでは、安倍首相が、人口の社会増減を、地方創生とアベノミクスの成功の指標として、とりあげていることに注目したいと思います。

 

 そこで、目を転じて、安倍首相の地元・下関市では、安倍首相の第2次政権以降、どういう人口動態をしめしたか、をみていくことにしましょう。

 

下関市の人口減少

 まず、下関市の人口減少は、2015年と2020年の、国勢調査の「結果の要約」の3ページ目にある「表 人口増減数の多い市町村の人口及び人口増減数」で、取り上げられています。

 それぞれの表の「人口減少数」の部分を、つぎにしめします。

 引用元のPDFは、つぎのとおりです。

 減少率は、引用者が計算しました。

 https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2020/kekka/pdf/summary_01.pdf(2020年)

 https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2015/kekka/kihon1/pdf/youyaku.pdf(2015年)

 

●人口減少数の多い市町村の人口及び人口減少数

  (2015年~2020年)

順位

市町村

2020.10.1

減少数

減少率

2015.10.1

1

北九州市

939029

-22257

-2.3%

961286

2

新潟市

789275

-20882

-2.6%

810157

3

長崎市

409118

-20390

-4.7%

429508

4

横須賀市

388078

-18508

-4.6%

406586

5

いわき市

332931

-17306

-4.9%

350237

6

函館市

251084

-14895

-5.6%

265979

7

呉市

214592

-13960

-6.1%

228552

8

下関市

255051

-13466

-5.0%

268517

9

堺市

826161

-13149

-1.6%

839310

10

青森市

275192

-12456

-4.3%

287648

11

佐世保市

243223

-12216

-4.8%

255439

12

神戸市

1525152

-12120

-0.8%

1537272

13

静岡市

693389

-11600

-1.6%

704989

14

福島市

282693

-11554

-3.9%

294247

15

京都市

1463723

-11460

-0.8%

1475183

16

高知市

326545

-10645

-3.2%

337190

17

小樽市

111299

-10626

-8.7%

121925

18

日立市

174508

-10546

-5.7%

185054

19

旭川市

329306

-10299

-3.0%

339605

20

釧路市

165077

-9665

-5.5%

174742

 

●人口減少数の多い市町村の人口及び人口減少数

 (2010年~2015年)

順位

市町村

2015.10.1

減少数

減少率

2010.10.1

1

北九州市

961286

-15560

-1.6%

976846

2

長崎市

429508

-14258

-3.2%

443766

3

石巻市

147214

-13612

-8.5%

160826

4

函館市

265979

-13148

-4.7%

279127

5

南相馬市

57797

-13081

-18.5%

70878

6

下関市

268517

-12430

-4.4%

280947

7

青森市

287648

-11782

-3.9%

299430

8

横須賀市

406586

-11739

-2.8%

418325

9

呉市

228552

-11421

-4.8%

239973

10

静岡市

704989

-11208

-1.6%

716197

11

小樽市

121925

-10004

-7.6%

131929

12

気仙沼市

64988

-8601

-11.7%

73589

13

今治市

158114

-8418

-5.1%

166532

14

日立市

185054

-8075

-4.2%

193129

15

秋田市

315814

-7786

-2.4%

323600

16

長岡市

275133

-7541

-2.7%

282674

17

旭川市

339605

-7490

-2.2%

347095

18

岩国市

136757

-7100

-4.9%

143857

19

桐生市

114714

-6990

-5.7%

121704

20

鶴岡市

129652

-6971

-5.1%

136623

 

 人口20万人台の都市をくらべると、函館市呉市下関市の順で、人口減少率が高いことがわかります。

 2010年から2020年までのこの3都市の人口減少数と減少率をつぎにまとめます

●人口減少数の多い市町村の人口及び人口減少数

 ──人口20万人台の3都市を比べてみる

 (2010年~2020年)

順位

市町村

2020.10.1

減少数

減少率

2010.10.1

1

函館市

251084

-28043

-10.0%

279127

2

呉 市

214592

-25381

-10.6%

239973

3

下関市

255051

-25896

-9.2%

280947

 

 2020年までの10年をみれば、下関市は、人口20万人台の都市のうちで、人口減少数は2位、減少率は3位だったのです。

 安倍首相が、施政方針演説で、人口の社会増を、地方創生とアベノミクスの成果をあらわす実績として紹介した考え方によるならば、安倍首相の地元である下関市は、これらの指標がよくないことから、地方創生やアベノミクスの成果からは、とりのこされてきたと言えそうです。

 そうした現実から、下関市をとりもどすことが、必要なのではないでしょうか。

 いま、下関市をふくむ衆議院山口4区の補欠選挙が行なわれていますが、そこでは、立憲民主党有田芳生候補が、アベノミクスの検証を、政策の3つの柱の2番目にあげています。

 人口20万人台の都市のなかでも、人口減少が著しかった下関市でこそ、この検証をもとに、政策転換がなされなければならないはずです。

 

 第2次安倍政権は、2012年12月26日から、2020年9月16日まででした。

 つぎに、下関市での、2013年1月1日から2021年1月1日までの人口増減を、しめします。

 人口の社会減が多くあったことがわかります。

 

第2次安倍政権がはじまってから

 下関市の人口増減

日付

人口

減少数

自然減

社会減

2013.1.1

275756

-2371

-1554

-817

2014.1.1

272923

-2833

-1729

-1104

2015.1.1

270447

-2476

-1665

-811

2016.1.1

267995

-2452

-1718

-1164

2017.1.1

265121

-2874

-1887

-987

2018.1.1

262064

-3057

-2085

-972

2019.1.1

259208

-2856

-2046

-810

2020.1.1

256532

-2676

-2109

-567

2021.1.1

254364

-2168

-2301

-1043

*2016.1.1と2021.1.1は、国勢調査の翌年のため、合計が合わない。

*人口の自然減と社会減の統計が1月1日時点で集計されているためこの表では、1月1日の時点の人口の動きをしめした。

 

 下関市の人口減少を取り上げた、地元の「長周新聞」の記事がありましたので、最後に、そのうちの2つを、そえます。

「深刻さ増す下関市の人口減少 戦後初の25万人台に突入 急がれる少子化対策 2018年11月10日」

 https://www.chosyu-journal.jp/yamaguchi/9853

「全国ワースト4位の人口減少 寂れるばかりのお膝元・下関 急ピッチで進む学校統廃合 2020年9月12日」

 https://www.chosyu-journal.jp/yamaguchi/18447

 

(付記1)安倍晋三首相退陣後も、下関市の人口は、ひきつづき減少している。

下関市の前回国勢調査以降

 の人口

日付

人口

減少数

2020.10.1

255051

-1987

2021.10.1

251716

-3335

2022.10.1

248236

-3480

2023.3.1

246646

-1590

 

(付記2)長門市と岩国市の人口減少

 人口減少が顕著なのは、下関市だけではありません。下記は一例。

長門市(山口4区)と岩国市(山口2区)の

 人口減少

市町村

2020.10.1

減少数

減少率

2010.10.1

下関市

255051

-25896

-9.2%

280947

長門市

32356

-5993

-15.6%

38349

岩国市

129125

-14732

-10.2%

143857

 

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