新・ファクトチェック 「大阪では第4波の方が第3波より致死率が低い」という吉村洋文・大阪府知事のコメント(2021/5/17)は、「誤り」。 翌々日5月19日時点の大阪府のコロナ死者を、大阪府の発表日ベースではなく、死亡日ベースでとらえると、死者は1125人。コロナ死者の99%を占める30代~90代で、致死率が第3波より高かった。5月17日時点でも同様だったのではなかろうか。
新・ファクトチェック
「大阪では第4波の方が第3波より致死率が低い」という吉村洋文・大阪府知事のコメント(2021/5/17)は、「誤り」。
翌々日5月19日時点の大阪府のコロナ死者を、大阪府の発表日ベースではなく、死亡日ベースでとらえると、死者は1125人。コロナ死者の99%を占める30代~90代で、致死率が第3波より高かった。5月17日時点でも同様だったのではなかろうか。
はじめに
きょうは、上記のkojitakenさんの記事にもある、第4波の致死率についての吉村洋文・大阪府知事のコメントについて、とりあげたい。
【ファクトチェック】「大阪では第4波の方が第3波より致死率が低い」との吉村洋文のコメント(2021/5/17)は「誤り」
https://kojitaken.hatenablog.com/entry/2022/02/23/100625
最終結果は、kojitakenさんの記事内容に尽きるけれども、つぎの2つの点が、この報告の趣旨になる。
1.統計の一見不思議な現象が、第3波とくらべた、第4波の致死率の動きに見られるので、その紹介。年齢別にデータを見ると、吉村知事のとらえた致死率とは異なる実態がみえてくる。
2.コロナ死数を、大阪府の報告日ベースでなく、実際の死亡日ベースでみると、この発言当時の状況が、第3波と比較して、むしろ深刻なものだったことが見えてくる。
以下、ご報告していきます。
最終結果は、つぎのとおりである。
kojitakenさんのブログにあるとおり、最終的な致死率は、
第3波で2.6%
第4波で2.8%
となり、第4波の致死率は、第3波を上回った。
つぎに、前の報告で参照した「tadaben」さんのデータを利用して、大阪府でのコロナ死数を、大阪府の報告ベースではなく、実際の死亡日ベースにして、吉村さんの発言のもとになったデータをとらえなおす。
データはこちらのページから。
https://tadaben.mydns.jp/covid/osaka_covid.html
・大阪府の死者データ:2020年8月から2023年3月31日まで
というのが、下部にあるので、そのページで、青い部分をクリックする。
*必要な方はご自由にご利用ください
とあるので、助かります。
これから取り上げる、死亡日別のデータは、ここにあげられているデータを、筆者がエクセルで編集しなおして、もとめたものです。
ところで、大阪府健康医療部による、5月12日時点のデータは、
国の「第35回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード」の「資料3-6 藤井先生提出資料」の22~23ページでみることができるが、
第3波の致死率2.6%
第4波の致死率1.5%
となっていて、このデータにもとづいて、吉村知事は発言している。
全年齢層にわたるコロナ死者数を、全感染者数でわった致死率は第3波を下回る。
でも、30代から60代までの致死率は、すでに第3波を上回っている。
この時点で把握されている第4波の死者数は、669人。感染者総数は4万3156人。
ところが、2月12日までの実際のコロナ死者数は、のちに報告された人数も含めると、925人。感染者総数でわると、2.14%になる。
たしかに致死率は、この時点では第3波よりも低いが、コロナの死亡者数は、ピークが感染者数のピークから数週間遅行するので、このあと致死率が高まると予測できるから、前回の波の約8割に実際には迫っていたと知れば、こういうデータもあるので、その点は明るい、などと受け止める評価はできない。
むしろ、増えているコロナ死者数に対して、正面からとらえずに、別のデータを示して、問いをかわすために、言及されているものだとしても、それをその時点で「低い」と評価できるような実際ではない。そうとらえられるような状況だとわかる。
それで、つぎに、翌週の状況をみる。
吉村知事が使ったデータの翌週公表のものだが、発言の翌々日のデータである。
吉村氏が、第3波より第4波は致死率が低い、と発言した翌々日の状況はどうだったか。
第36回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(2021年5月26日)
資料3-5 藤井先生(大阪府健康医療部長 藤井睦子氏)提出資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00256.html
こちらから、該当の図表を示す。
さらに、表を拡大すると、第3波と第4波の年齢別致死率は、このようになっている。
この時点での大阪府の第4波での致死率(死亡率)は、1.8%と、されました。
陽性者総数は、20代までの陽性者数をふくめて、4万7089人です。
死亡例総数869人÷4万7089人=1.845%
ですね。
そして、ここで「tadaben」さんのデータをつかって、5月19日までの死亡日別の死者数を年齢別に整理して、この表の「死亡例総数」の欄にいれてみましょう。
3月1日から5月19日までの死亡日別コロナ死者の総数は、1125人です。
上の表では、5月19日までの公表日ベースの第4波死者数は869人ですから、その後に、この日までのコロナ死者の公表が、さらに256人、あったのです。
陽性者総数は、20代までの陽性者数をふくめて、4万7089人です。
死亡率は、2.39%になる。第3波の死亡率2.60%との差が、それほどなくなりました。
それでも、死亡率は、まだ第3波のほうが低い、とは言えます。
さて、ここからが、本題です。
年代別の死亡率も、計算しましょう。
いちばん右側は、第3波の大阪府でのコロナ死亡率です。
●大阪府の第4波コロナ死亡率を「死亡日別」データでみる(5月19日時点での死亡まで)
死亡者 陽性者総数 死亡率 第3波死亡率
30代: 6 6713 0.09% 0.02%
40代: 12 7268 0.17% 0.06%
50代: 45 6797 0.66% 0.28%
60代: 92 4052 2.27% 1.62%
70代:294 3860 7.62% 6.53%
80代:473 2633 17.96% 14.80%
90代:194 804 24.13% 22.47%
100代: 9 41 21.95% 27.78%
計:1125 32168 3.50%
(参考)
90代以上:203 845 24.02% 22.67%
あれっ!
これをみると、100代以外は、もうすでに、死亡率はすべての年齢層で、第4波のほうが高いのです。
死亡者1000人内外のところ、100代の死者数は10人ほどなので、1%くらい。
つまり、コロナ死者の99%を占める年齢層で、吉村知事のコメントの翌々日には、致死率は、第3波をすでに現実には上回っていたわけです。
100代を、90代に含めて示せば、すべての年代で、死亡率は第3波を上回った、とも言える。
吉村知事の発言のあった、2日前の5月17日にも、これに近い状況だったとも考えられます。
以上で、レポートはほぼ終りです。
ですが、疑問を抱く方もおられるでしょう。
全体の致死率は、死亡日基準でとらえても、第3波では2.60%なのに対して、5月19日時点の大阪府のコロナ第4波の致死率は2.39%だ、と言いました。
全体で見れば、致死率は、第3波の水準より、まだ低い。
それなのに、どうして、すべての年齢層で、5月19日時点の第4波致死率が、第3波を上回る、なんてことがあるのか?
ありえない、と思った方もいるのでは?
どうしてか、おわかりですか?
それは、死者を出していない、20代までの新規陽性者の割合が、第4波では高かったからです。
早い話が
人数 高血圧 割合
若者 40人 0人 0%
高齢者男30人 15人 50%
高齢者女30人 15人 50%
なら、全体での高血圧率は30%。
人数 高血圧 割合
若者 60人 0人 0%
高齢者男20人 12人 60%
高齢者女20人 12人 60%
なら、全体での高血圧率は24%です。
全体の高血圧率は下がっていても、3つの集団のうち、高血圧率が下がった集団はありません。
同じか、または高くなっている。
これと同じことが起こっていたのです。
ですから、大阪府で5月下旬にコロナ第4波での致死率が、いまだ第3波より低くみえた理由は2つ。
1.大阪府で死亡者の計上が遅れたこと。
2.新規陽性者の集合のなかで、若者の比率が高かったこと。
ということがわかります。
でも、吉村知事は、これら2つのことを知らなかったのでしょうか?
知ってて、それでも、第4波では第3波よりも致死率が低いという発言をしたのではないのでしょうか?