「コロナ下、国内死者、2年で17万人増加 同時期のコロナ死者数(5万4000人)の3倍」という、朝日新聞の記事が、1面・2面(5月6日朝刊)に。 「感染拡大後、地方で増加めだつ」 これは、ほしかった記事だ
コロナ下、国内死者、2年で17万人増加
同時期のコロナ死者数(5万4000人)の3倍
という、朝日新聞の記事が、1面・2面に。
感染拡大後、地方で増加めだつ。
これは、ほしかった記事だ
昨日の朝日新聞朝刊。
見出しは、この報告の見出しとは異なり、
「コロナ下 国内死者13.5万人増
感染拡大後、地方で増加めだつ
流行前水準比」
というもの。
1面のトップ記事につづけて、掲載されている。
(※このレポートと、新聞で、見出しが異なることについては、あとでふれます)
「時々刻々」の記事として、さらに2面いっぱいをつかった、充実した記事だ。
ウェブでは、有料記事(そのため、上記の画像は、記事本体の大部分を消している)。
コロナ下、国内死者13.5万人増 感染拡大後、地方で増加めだつ 流行前水準比
https://www.asahi.com/articles/DA3S15629481.html?iref=mor_articlelink02
(時時刻刻)間接的にもコロナ禍の影 循環器の病気や老衰、増えた死者
https://www.asahi.com/articles/DA3S15629410.html?iref=pc_shimenDigest_sougou2_01
「朝日新聞の有料契約がないかたは、近くのコンビニに買いに行かれることをおすすめしたい」と、この紹介のレポートを書きはじめてみたものの、この報告の公開は、記事の翌日になってしまった。
つぎのような内容が、記事では、たしかな検証をへて書かれている。
①コロナ下の超過死亡数の実情はどうか
②超過死亡数が、大幅に「コロナ死者数」を上回っている理由はなにか
③感染拡大後、地方で増加めだつ。その理由はなにか
1面の見出しの「地方で増加めだつ」は、そうだろうと思っていた。
このことをはっきり書いたことだけでも、ありがたい。
②についても、そうだろうと思っていたことが、はっきり書かれている。
この3点について、もうすこしのべたい。
①については、はじめに、お気づきと思いますが、このレポートの見出しと、朝日新聞の見出しが異なることについて、のべておきたい。
朝日新聞は「コロナ下 国内死者13.5万人増」と見出しをたてた。
わたしは、「コロナ下 国内死者2年で17万人増加」とした。
朝日記事によると、年ごとでは、
①2020年の死者は、予測より約3万5000人、少なかった。
「コロナがまだ広がっていなかった一方、マスクの着用や外出自粛が進み。インフルエンザの流行が抑えられるなどしたとみられる」
「しかし、感染が拡大した」ため、
②2021年の死者は、予測より約5万2000人、上回った。
③2022年 〃 は、 〃 約11万8000人、多かった。
そのため、わたしのレポートでは、2021-22の2年間について
「国内死者2年で17万人増加」
としたものです。
これは、発表日ベースでみたコロナ死者数が、累計で
2020年末時点: 3459人
2021年末 〃 :1万8385人(1万4926人増加)
2022年末 〃 :5万7266人(3万8881人増加、2020年末から5万3807人増加)
となっているので、
17万人÷5万3800人≒3.16(倍)
と考えて、コロナ死者公表数の約3倍、としたものです。
すこし前に、2022年の日本の超過死亡数が「約11万3000人」という記事を見たことがある方もおられるでしょう。
それは、2021年10月1日から、2022年9月30日までの人口推計にもとづいた、超過死亡数です。
国勢調査が5年ごとの10月1日なので、この日付の幅で集計されています。
それにたいし、きのうの朝日新聞で、2022年の「予測死者数との差」として、しめされているのは、
1.2022年1月から12月まで
2.「超過死亡数」から「過少死亡数」を差し引いた
という、2つの点で、先日報道された「超過死亡数」とは異なっているようです(注*)。
*他にも、異なる点があるかもしれない。
ちなみに、2019‐2022年の死亡者数は、
2019:138万1093人
2020:137万2755人
2021:143万9856人(以上、確定値)
2022:158万2033人(速報)
なのだそうです。
2022年の死亡158万人超、戦後最多 コロナ余波も〈日本経済新聞2月28日〉
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA277KO0X20C23A2000000/
ここからは、ここまでのデータからみた、門外漢のおおざっぱな仮定にもとづく計算になりますが、
各年の12月第3週までの過少死亡数は、厚労省サイトで見ることができ、
それを、各都道府県別でみて集計すると、
2020:5万2997人(超過死亡数:1万5676人)
2021:1万2485人
2022: 5114人
なので、誤差はあると思いますが、この人数ぶんの過少死亡が織り込まれてると考え、
それぞれ、
2020年:139万2000人
2021年:140万人
2022年:146万9000人
という死亡者数の予測がなされていたと、おおざっぱに考えて、死亡者数の増加率を推定すると、
超過または過少死亡数が
2020:▲3万5000人
2021:5万2000人
2022:11万8000人
というのは、死亡者数が、予測とくらべて、
2020:▲2.5%
2021:+3.7%
2022:+8.0%
ということになりますね。
もし、国立感染症研究所と同じように、超過死亡数から過少死亡数を差し引かないで考えれば、死亡者の予測との差は、さらに高い割合になるはずです。
つぎは、②です。
上記の朝日新聞記事は、有料記事なので、1~2面のうち、1面の内容を紹介するにとどめ、2面はほんのすこしにしようと思いますが、1面だけでも、簡潔で、情報量が多いです。
超過死亡には
「コロナで亡くなった人」のほかに
「コロナに感染したことで持病が悪化」した人や
「長期の自粛で衰弱」したり
「医療逼迫や受信控えのために必要な治療が受けられなくて、亡くなった」りした人が
多くいたとみられる。
というのです。
死因別には
「肺炎などの呼吸器の病気」
「老衰」
などの増加が顕著だった。
そして「地方で増加めだつ」として
「人口あたりの死者は、都市部よりも、地方で多くなっていた。
医療体制が都市部より脆弱で、高齢化率も高かったことなどが影響したとみられる」
「香川や佐賀などは、2021年までは少なかったのに急増。
3年間の累計では、宮崎や高知、富山が高かった」
というのです。
1面だけでも、この内容で、2面はさらにくわしい。
2面に、県ごとの超過死亡が、週単位で図示してあります。
2022年、とくにその後半に、地方での死者増加が、めだっています。
(このレポートでは、紙面をカラーでしめしていないので、わかりにくいかもしれません。
実際の図をみると、このことがよくわかります。
図のいちばん右側の12月末に、もっとも赤色が濃くなっていて、年末の最終週に、最大の超過死亡があって、今年をむかえることになったことが、みてとれます)
つぎに、この朝日新聞の記事とほぼ同一と思われる、計算をしてみましたので、その表をのせましょう。
記事1面の最初にある、この図のもととなっていると思われる、データをさぐってみました。
4月19日の「第121回新型コロナウイルス感染症アドバイザリーボード」の「資料3-2鈴木基先生(国立感染症研究所)提出資料」から、この表(左側の4列)は、作成しています。
この表の左から2番目の列が、朝日新聞の1面のこの記事のいちばん上にある地図の色分けと、ぴったり一致していますね。
「予測死者数との差(2020~22年の合計)都道府県別。人口10万人あたり」
https://digital.asahi.com/articles/photo/AS20230506000268.html
コロナ第8波のピークは、2022年12月と、それを上回る2023年1月でした。
そこで、2023年1月の「予測死者数との差」を、上の表にくわえています。
すると、地方の県のなかには、この月だけで、これまでの合計の1割5分から3割近くもの「予測死者数との差」が生じているところが少なくないことがわかります。
2022年末時点までに公表された、コロナ死者数も、表の右側にそえました。
コロナ第9波がきて、第8波をしのぐ波になる可能性が指摘されています。
その被害をもっとも受けるのは、なによりも地方県(の高齢者)なのでしょう。
知事さんたちも、懸念の声をあげています。
コロナ5類「移行後」、複数の知事が懸念 入院対応に難色示す病院も
https://digital.asahi.com/articles/ASR4W5QW8R4SUTFL011.html
コロナ5類移行後の医療機関、確保は 知事の4割「わからない」
https://digital.asahi.com/articles/ASR4W563TR4WUTIL01G.html
わからない、って。
有名知事では
小池百合子知事(東京都)、鈴木直道知事(北海道)……無回答
吉村洋文知事(大阪府)、斎藤元彦知事(兵庫県)、大村秀章知事(愛知県)、玉城デニー知事(沖縄県)……わからない
などといったところ。
アンケートには、つぎのような質問もあったようだ。
〈アンケートでは「新たな感染症への備え」についても聞いた。「備えは十分か」の質問に、「十分」(2人)、「ある程度十分」(29人)があわせて7割近くだった。
一方、「不十分」(2人)、「やや不十分」(8人)も2割を上回った。この10人に複数回答で理由を選んでもらったところ、「医療提供体制」が7人で最多だった。その後は「行政のDX化」が6人、「国と都道府県の連携」「ワクチンの開発・確保・接種」「財源の確保」が各3人と続いた〉
とあるが、「ある程度十分だが、ほとんど不十分」だったり、「やや不十分だが、ほぼ十分」ということだって、あるんじゃないか。
苦肉の策が透けるような、アンケートに見える。
「ある程度、クレオパトラに似た絶世の美女だが、鼻が低かった」とか、
「ある程度、大谷翔平は完全試合の投球をしたが、打ちこまれて敗戦投手になった」
とか、どうなのか。
「ある程度、髪が生えている」ひとと、「いくらか禿げている」ひとは、どちらの髪が薄いのか。
どう思いますか。
最後に、さきの「予測死者数との差」の、地図や表をみると、滋賀県と三重県を除く、関西の「超過死亡」が多いことがわかる。
この地域は人口が多いので、大阪をはじめとして、多くの死者を出した。
これらの県も、人口あたりの死者数の超過割合が高いことも、ゆるがせにできないですね。
朝日新聞の紹介が、多くなった。
このへんで、きょうのレポートを終わりにしたい。
なお、2021年の超過死亡については、朝日新聞に、つぎの記事がある。
「2021年の国内死者、想定超える 新型コロナによる医療逼迫影響か」(2022年5月22日)
https://digital.asahi.com/articles/ASQ5P5KC6Q5NUTFL019.html
*その他の関連記事
「平均寿命、10年ぶりに縮む 女性87.57歳、男性81.47歳 コロナが影響」(2022年7月30日)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15372786.html
「令和3年(2021) 人口動態統計(確定数)の概況」(厚生労働省2022年9月16日)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei21/dl/15_all.pdf (PDF)
「年齢調整死亡率(人口千対)は男 13.6、女 7.4 で、男女とも前年の男 13.3、女 7.2 より上昇した」
2021年に、さがってきていた死亡率があがり、あがってきていた平均寿命がさがった。2022年の結果は、どうでるだろう。
【高齢者受難の2022年-③】 予想以上だった、2023年1月までの「超過死亡」。 2022年11月に前年同月比で減少した、日本人の高齢者人口。 翌月以降の高齢者人口の動きはどうなるか。 「超過死亡」のデータとあわせて、みていきたい。
【高齢者受難の2022年-③】
予想以上だった、2023年1月までの「超過死亡」。
2022年11月に前年同月比で減少した、日本人の高齢者人口。
翌月以降の高齢者人口の動きはどうなるか。
「超過死亡」のデータとあわせて、みていきたい。
このデータからは、2022年8月から2023年1月までの半年で
対前年同月比の死亡者数が、約10万人、ふえたようにみえる。
この傾向は、今後はどうなるのだろうか。
まずは、超過死亡のデータを引用することとしましょう。
グラフから。
4月20日に、今年1月までの、週ごとの超過死亡数のデータを、国立感染症研究所が公表しました。
この超過死亡数のサイトによると、週ごと死亡数は、つぎのようになっています。
https://exdeaths-japan.org/graph/weekly
いちばん左が2017年で、いちばん右が2023年1月です。
死亡数がおおきく増加していることは、一目瞭然ですね。
とくに、2022年の2月から3月にかけてに山があり(コロナ第6波)、
その後、2022年7月末からふたたび、超過死亡の多い山ができ(コロナ第7波)、
超過死亡の多さがつづいたまま、
2022年の12月から2023年1月には、過去最大の山ができている(第8波)、
ということが、みてとれます。
●コロナ死者数が最大だった、2023年1月の死者数(他の死因を含む)は、コロナ死者数
の2倍半近かった。
前年同月比で、2万5000人くらい増えたと思われる。
図は、週間の死者数がここまでで最多となった、2023年1月2日~8日の週にカーソルを合わせていますが、死者数は3万8899人でした。
1月2日から29日にかけての死者数は、つぎのとおりです。
1月2日~8日 3万8899人
9日~15日 3万8624人
16日~22日 3万5658人
23日~29日 3万6586人
ですので、この期間の死者数は、14万9767人です。
1月1日の死者数を、同日までの1週間の死者数3万8586人を7で割った5512人と仮定し、
1月30日と31日の死者数を、前週の死者数が3万6586人だったので、約1万人と仮定すると、
1月の死者数は、16万5000人余りとなります。
前年の2022年1月の死者数は、14万0284人なので、約2万5000人、死亡数が多くなっています。
対前年同月比で、2万人台半ばとなり、過去最大の超過数となります。
(超過死亡数は、定義が異なりますので、この人数よりは少なくなります。4週合計では1万9697人でした)。
これは、もちろん、2023年1月のコロナ死者数(公表日ベース)が、1万0825人と、過去最大だったことと、コロナが引き金になった、他の死因に分類されている死亡が少なくなかったことの反映だと思います。
●2022年12月の死者の増加数も、前年同月比で、2万人を超えたとみられる
その前月の2022年12月も、死者数が、対前年比で、顕著に増加しています。
11月28日から、翌年1月1日までの死者数は、つぎのとおりです。
11月28日~12月4日 3万2206人
12月5日~12月11日 3万4076人
12日~ 18日 3万5097人
19日~ 25日 3万8325人
26日~翌年1月1日 3万8586人
ですので、この期間の死者数は、17万8290人
11月28日~30日の死者数を1万3800人、1月1日の死者数を5512人と仮定すると、
12月の死者数は、約15万9000人となります。
前年2021年12月の死者数は、13万5597人なので、2万3000人余り、死亡数が多くなっています。
(超過死亡数は、この人数よりは少なくなります。5週合計では2万0862人でした。月間の超過死亡数も、翌年1月が最多でしょう)。
●2022年11月の死者数
その前月の2022年11月の死者数は、どうだったでしょうか。
10月31日から、11月27日までの死者数は、つぎのとおりです。
10月31日~11月6日 3万1048人
11月 7日~ 13日 3万1340人
14日~ 20日 3万0671人
21日~ 27日 3万1185人
ですので、この間の死者数は、12万4244人
11月28日~30日の死者数を1万3800人、10月31日の死者数を4400人と仮定すると、
11月の死者数は、13万3000人余り。
前年2021年11月の死者数は、12万1849人なので、1万1000人ほど、死亡数が多くなっています。
(超過死亡数は、4週合計で、6881人でした)。
ということは、2022年2月・3月のコロナ第6波で、2か月つづけて、コロナ禍のもとで、はじめて1万人を超える、前年同月比での死亡数の増加となったわけですが(それ以前の死亡数増加月にも、おおいに注目すべきですが)、コロナ第7波の8月にふたたび死亡数の対前年比が1万人超の増加となったあと、第8波の2023年1月まで半年つづけて、死亡数が対前年同月比で、1万人超の増加となったと思われます。
前回のレポートでしめした表を再掲します。
この表のところまでが、人口推計の確定値として出ているものです。
そのあとの3か月について、国立感染症研究所の超過死亡のサイトの、死亡者数データ(超過死亡数データではなく)をつかって、動向をみたのが、ここまでのレポートです。
2022年8月から10月までで、3万9819人、死亡数が前年同月比でふえましたが、11月から2023年1月までで、6万人くらい、死亡数が前年同月比でふえているようであり、この半年だけで、死亡数が、前年同月比で約10万人も、ふえたようなのです。
増加率は、8月:14.8%、9月:9.8%、10月:9.1%の増加。平均で11.3%。
11月から翌年1月までの死亡者数の前年同月比の増加を6万人とすると、この3か月平均で15.1%の死者増加。
ということになります。
ここで、なにが大事なのでしょうか。
こうした、死者数の増加は、なぜ起こっているのか
ということが、もちろん大事です。
そして、このあとのコロナ第9波以降が、どのようなものになるのか
とあわせて、この死者数の増加の傾向が、今後はどうなっていくのか
ということです。
コロナ死者の報告数が多い月の谷間にあたる、2022年10月と11月の死者数が、いずれも前年同月比1万人以上も増加するというのは、どういうわけなのでしょうか。
昨年9月26日から、新型コロナウイルス感染者の全数把握がなされなくなりました。
そのことと、なにか関係はないのかどうか。
さらに、コロナ以外の死因で、コロナ感染と関連して、あるいはコロナ感染がひきがねになって、死亡となっていないのかどうか。
こちらも、それ以上に、気になる。
また、対前年比の死亡者増加が、1万7615人だった、2022年8月や、2万人を超えるとみられる2022年12月や2023年1月には、とりわけ、医療逼迫によってまねかれた死亡が少なくなかった可能性はないだろうか。
それで、今日から、ゴールデンウイークに入ります。
そして、ゴールデンウイークあけに、コロナ5類移行が、即、はじまります。
毎日の感染状況の把握もなくなり、国の新型コロナウイルスアドバイザリーボードも、不定期開催になる。
行政の対応はもとより、コロナを警戒するわたしたちにも、
情報は、これまでのようには与えられず、あとになってから、これまでより不十分なものが与えられることになる。
5月8日は、連休あけで、長期の休みあけに、感染状況が急に進むことは、これまでに何度もあったのに、状況がよくわからない。そうなると、どうなるんだろうか。
そう思いながら、目にした記事を2つ貼って、このレポートを終える。
厚生労働省の新型コロナ専門家会合
“第8波超の「第9波」の可能性も”
新型コロナ 専門家会合有志(4月19日)
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/advisory-board/detail/detail_111.html
【#天下の愚策】厚生労働省が5月8日に新型コロナを感染症法5類に格下げすることを正式決定。コロナ対応の医療機関は増えるどころか減る。感染者数も死者数も増える危険性。しかし実態は公表されなくなる。
https://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/d20b9f0b372f2e06776300455ce3efd1
【高齢者受難の2022年-②】 2022年11月1日時点の人口推計〈確定値〉で 日本人高齢者人口(65歳以上)は、前年同月比で減少になった。 高齢者の死者の人数に、変化が起きているのではなかろうか。
【続・高齢者受難の2022年】
2022年11月1日時点の人口推計〈確定値〉で
日本人高齢者人口(65歳以上)は、前年同月比で減少になった。
12月1日現在の人口推計では
外国人をふくめた日本の高齢者人口も、前年同月比で減少になるだろう。
2017年の人口推計では、2043年に起こるはずの高齢者人口減少が
約20年早く起きている。
高齢者の死者の人数に、変化が起きているのではなかろうか。
この現象は、今後もつづくのだろうか。
前回のレポートで、毎年の人口推計の年報が出されたのをみて
- 高齢者人口の増加が急激に鈍化している
毎月の人口推計(概算値)をみると
- 2022年末には、日本人の高齢者人口が、対前年同月比で減少になりそうだ
と、言いました。
このレポートを投稿する前に、4月20日に、昨年11月の人口推計(確定値)が出ました。
それによると、もう、この時点で、日本人高齢者人口は、前年同月比で減少していました。
統計表をしめします。
2022年11月1日時点での日本人の高齢者人口(65歳以上)は、3602万2000人ですが、
1年前の2021年11月1日の時点での日本人の高齢者人口は、3602万8000人でしたので、
日本人の高齢者人口は、6000人ほど減少したことになります。
2017年の人口推計では、高齢者人口は、2043年になって減少転じると予測されていたのに、
それより20年も早く、対前年比で減少することになった。
この傾向は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大と、死者数の増加が、最大の要因になって起きていることです。
新型コロナウイルス感染症の死者数(発表日ベース)を、月ごとに集計したものを、つぎにしめします。
高齢者人口の減少や、伸びの鈍化は、コロナ死者数(発表日ベース)がおおい時期に起きていることが、わかります。
ですが、2022年の初夏以降の動きをみると、
たとえば6月は、日本人の高齢者人口は、増減「0」となっていて、
コロナ死亡者数「571」が、死亡者数の谷間になっていることと対応していないし、
8月、9月、10月と、日本人高齢者人口は、各月1万1000人ずつ減少しているのは、
10月のコロナ死者数が「1864」と、前の2月が「7295」「4923」となっていたのが減少したことを反映していない。
これには、なにか理由があるのではないでしょうか。
そんな流れのなかで、2023年のコロナ第8波が、死者数最大だった時期の人口推計の結果(確定値)が、まだ出ていない。
どういうことになるのでしょうか?
ちなみに、外国人を含む高齢者人口は、2022年11月1日現在で、3622万5000人。
前年11月は3622万4000人でした。前年同月比の増加幅は、わずか1000人になっています。
8,9,10月とつづけて、高齢者人口がそれぞれ1万人内外だけ減少していますから、
それより減少数はすくなくても、
12月1日時点で、高齢者人口は対前年比で減少、になるのではないでしょうか。
2023年4月1日時点の、高齢者人口(外国人を含む)は、3619万人(単位:万人での概算値)。
対前年比で、4万人前後の高齢者人口が、対前年比で、減少すると、いまのところ概算が出ているわけなのです。
*注:毎年の傾向として、12月には増加数が小さい方向になり、翌1月には増加数が大きくなってるようです。
なんらかの理由があるのだと思います。
コロナ死がはじめて発生した2020年2月を除き、死者報告数が最小だったのは2021年12月ですが、
その月に、高齢者人口は前月比で1万3000人と、もっとも多く減少しています。
逆に、毎年、死亡者数(全死因)が最多なのは1月ですが、1月は、高齢者人口が、これまで、年間最多の
増加数だったのです。
12月と1月については、高齢者数の統計は、そのまま、受け取ることはできないと思われます。
死亡統計もしめしておきましょう。
上記は、一部が、最新の数値ではないので、傾向をみるためのものとお考えいただきたいのですが、だいじなことを忘れてました。
この2022年10月の高齢者人口の対前年比1万1000人の減少は、死亡者数が対前年比1万0953人の減少と、ほぼぴったり同じだということです。
ここでだいじなのは、コロナ死(発表ベース)が、1864人なのに、なぜ、1万人以上も、死者数がふえたかってことです。
そして、このことが、なんらかの死亡にかかわる、あたらしい動向になってしまうようなものなのか、だと思います。
この稿を書いた日に、同じ4月20日に、国立感染症研究所の「超過死亡」サイトが更新されて、2023年1月までのデータが掲載されているのに気づきました。
超過死亡数は、かつてないものになっていました。
週ごとの死亡数のデータもあります。
つぎに、そのご報告を書きます。
【高齢者受難の2022年-①】 2022年の日本人高齢者(65歳以上)人口は、わずかながら減少したようだ。 外国人をふくむ総人口も、減少したかもしれない。 そんな状況での、新型コロナ感染症の「5類」移行は、この状況を継続させてしまう危険性はないか。
【高齢者受難の2022年】
2022年の日本人高齢者(65歳以上)人口は、わずかながら減少したようだ。
外国人をふくむ総人口も、減少したかもしれない。
統計(概算値)を、暦年(12月末時点)でみると、そう読みとれる。
もちろん、これは、新型コロナウイルス感染症の、2022年の全国での蔓延がもたらしたものだ。
この状況は、直近の人口推計結果(概算値:3月1日現在)を見ても、つづいている。
そんな状況での、新型コロナ感染症の「5類」移行は、この状況を継続させてしまう危険性はないか。
*あす29日までに、3回、連載する予定です。
つづいて、この大阪(府・市)編を、レポートしたいと思っております。
*全国の高齢者人口の直近の年間増減を、見ます。
4月13日朝刊に、2022年10月1日現在の人口推計がのりました。
目にした朝日・毎日は、どちらも1面の左側でした。
記事は、つぎのようなものでした。
○人口は12年連続で減少。日本人は75万人減少で、1950年代以降で最大の落込み。
○15歳未満の人口、15~64歳の生産年齢人口は、それぞれ11.6%、59.4%。
どちらも過去最低の割合だった。
○65歳以上の高齢者人口は、29.0%で、過去最高だった。
https://www.asahi.com/articles/ASR4D4WV0R4DULFA013.html?iref=comtop_BreakingNews_list(朝日新聞)
このうち、わたしが注目したのが、最後の高齢者の人口です。
総務省統計局が公表している「結果の概要」によりますと、前年比2万2000人の増加でした。
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2022np/index.html
では、昨年2021年は、前年比でどうだったか。1年前(2021年10月1日時点)の総務省統計局の「結果の概要」をみると、前年比18万8000人の増加でした。
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2021np/index.html
2021年10月時点と、2022年10月時点での年間の人口増減をくらべると、高齢者人口の増加数が、顕著に少なくなっていることがわかりますね。
あとひと息で、減少に転じかねないくらいに、高齢者人口の増加数がへりました。
これは、将来人口推計では、予測されていたことなんでしょうか?
○将来人口推計では、どうなっていたか。
日本の将来推計人口の直近のものは、2017年推計です。
(注:このレポートを数日前に書いた直後の4月26日に、将来人口推計2023が公表されています)
死亡:中位推計では、つぎのように予測されています。
高齢者(65歳以上)人口は、2042年まで増加をつづける見通しでした。
例外は2031年ですが、これは、1966年生れの方が、新たに65歳以上の高齢者になる年だからです。
丙午の年ですね。65歳以上の高齢者の人口は、この年に16万人減少すると予測されてます。
2021年は、19万4000人増加の予測だったものが、18万8000人増加。6000人ぶん少なかった。
2022年は、9万3000人増加の予測だったものが、2万2000人増加。予測より7万1000人少ない。
これが、新型コロナウイルス感染症の、2022年の蔓延によって、死者がふえたからであることは、明らかなことです。
新型コロナウイルス感染症の蔓延は、新型コロナによる死者ばかりではなく、それが引き金になった循環器系疾患による死者などをも、ふやしてきました。
そのことは、国立感染症研究所による超過死亡の報告に、レポートされています。
人口統計は、国勢調査が行なわれる10月1日時点の人口で、各年をくらべます。
高齢者人口の増加ペースが、2022年の統計で大きく減じたため、新型コロナウイルス感染症の今後の動向によっては、今後、65歳以上高齢者の人口減を、2043年よりも約20年も前に、まねきかねない。そんなふうに思われます。
そう思いながら、毎月の人口推計の統計をみてみると、2022年12月末時点で、すでに、対前年比で、65歳以上の日本人人口が、減少したとみられることがわかりました。
外国人をふくむ人口でも、対前年比で減少した可能性もあります。
そして、その傾向は、直近の3月1日時点の人口推計(概算値)でも、同じでした。
以下に、統計数値をしめしましょう。
⇒ここまで書いて、このあとの、概算値の人口集計を紹介しようと思っていたところ、
予想を上回り、2022年11月1日時点で、日本人の人口推計(確定値)で、高齢者人口は、前年同月比でマイナスになりました。
稿をあらためて、そのことをご報告しましょう。
あ、日本人の高齢者人口(65歳以上)が、2022年10月1日時点で、対前年比でふえた増加幅は、1万4000人でした。
2021年10月1日時点では、対前年比17万9000人増加でしたから、増加幅はおおきく縮小しています。
このことを、書きわすれていました。
それが、翌月の11月1日時点では、どうなったのか。
⇒一昨日(4月26日)に、2020年の国勢調査をもとにした、あたらしい将来人口推計が出てます。
これは、コロナの影響は除外したものだと報じられています。
これを読んで、もし、このレポートに修正が必要なところがあれば、後日、それを反映いたします。
安倍晋三元首相の後継候補・吉田真次さん! ! これは、ヘイトスピーチではないですか
安倍晋三元首相の後継候補、吉田真次さんが
ヘイトスピーチ解消法が成立した日にあるブログに書かれた
文字通りの、デタラメな「糞記事」(←糞尿が出てきて下品)にもとづいた
フェイスブック投稿をしているが
これは「ヘイトスピーチ」ではないですか
という話。
フェイスブック投稿の内容については
このレポートの、後半で、紹介しています。
***
安倍元首相の山口4区候補者・吉田真次さんの、安倍さんの地元下関市での右翼議員活動のようすについては、すでに、いくつかの記事が出ている。
デイリー新潮(2月7日)
〈安倍元首相の後継者になった38歳「下関市議」の評判 「日の丸ボーイ」と呼ばれていた思想・信条〉
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/02071101/
女性自身(4月13日)
「山口4区補選 安倍元首相の後継候補の“外国人の人権”巡る過去投稿が波紋」
https://news.yahoo.co.jp/articles/f37828ebb0510a2b41474fcc29c29f8261527075
リテラ(2月15日)
「山口補選トンデモ候補は家系図アピールの岸信夫息子・信千世だけじゃない! 安倍元首相の後継は“安倍以上の極右”」
https://lite-ra.com/2023/02/post-6262_3.html
「女性自身」から、引用する。
〈問題の発言は、吉田氏が2016年10月にツイッターに投稿したもの。
《最近、外国人であることで差別されたという報道が目立つが、悪意や差別という意識がない言動にそこまで過剰に反応することはどうなのか。安倍政権が、移民政策を推進し、人権擁護法などを成立させるような政権でなくて本当に良かったと思う》
外国人が日本で働いて技術を学ぶ外国人技能実習制度があるが、国際貢献の目的から離れて労働力確保の手段になっている実態や、賃金未払いや不当解雇といった問題が絶えない。こうした事態を受けて、先日、政府の有識者会議では制度を廃止し、見直す方向で検討していくことが発表されたばかり。
6年半以上前の呟きではあるが、こうした外国人を巡る環境面での問題があるなか、人権擁護などに異議を唱えていた吉田氏。山口4区は安倍元首相の選挙区だったこともあって全国的にも注目度が高く、吉田氏の投稿が選挙に際し話題となり、ツイッターでは「山口4区補選」が一時政治部門でトレンドワード入りするほどに。〉
これは、2016年10月11日のツイートである。リテラに先にとりあげられたものだが、これを読んで、筆者は「最近、外国人であることで差別されたという報道が目立つ」とあったので、どういう報道をみて、こんなツイートをしたのかに、関心をもった。
この年は、ヘイトスピーチ解消法が、自公から参議院に発議され、修正がなされたのちに、5月13日に参院本会議で議決され、同月24日には衆議院本会議で可決・成立した。
発端は、2013年3月に、有田芳生・参議院議員を中心に、議員有志がひらいた、ヘイトデモに反対する院内集会にあったという。その後、NGO・人権団体の取り組みが展開されて、報道も活発化し、人種差別撤廃法上の義務不履行にあたり、問題だという認識がひろまる。
5月には、国会質疑で、谷垣法相・安倍首相が、ヘイトスピーチなどについて問われる。
〈谷垣禎一法相は、「日本は品格ある国家をめざさなければならない、また成熟した社会をつくらなければならないとき、新大久保や鶴橋でのそういう行動は真っ向から反するもの」「ヘイトスピーチだけでなく、インターネットを見てもいろんな言論が行われているのは事実」だと認め、「憂慮に堪えない」と述べました。〉(9日、参院法務委員会、有田質疑に答えて)
〈これに先立つ5月7日の参議院予算委員会で、鈴木寛議員(民主党)が安倍晋三首相に同様の質問を行いました。安倍首相は「一部の国、民族を排除する言動があるのは極めて残念なことだ」と述べています。〉
(上記の2つの国会質疑の紹介は、ヒューライツ大阪のニュース・イン・ブリーフより)
8月には自公与党の取り組みもはじまる。
翌2015年には、野党案が発議されるが、継続審議になる。
他方、与党案の検討もはじまる。
翌2016年3月、自公共同のワーキングチーム設置。同月には参院法務委員会の参考人質疑、現地視察、4月には政府質疑がなされた。同月、与党案が発議される。
その後、修正をへて、5月24日に可決・成立した。
この5月24日、「日本人客に糞尿を食べさせる…韓国のレストラン従業員逮捕」というブログが、「淫夢新聞社」という名で、書かれている。
これについては、あとで。
この「ヘイトスピーチ解消法」成立後の成果が、いくつかでてきはじめたのが、吉田真次さんの、さきのツイートがされた、2016年のこのころだったようです。
ツイートがされた10月11日(火曜日)に先立って、2つの判決がでています。
○9月27日(火曜日)
「在特会のネット上のヘイトスピーチ、「人種差別」と認定 大阪地裁」
〈桜井氏の一部発言について「在日朝鮮人に対する差別を増幅させる意図で行われた」として人種差別と認定、在特会と連帯して77万円を支払うよう命じた。〉
https://www.sankei.com/article/20160927-Q2BSB6GKX5JLFMMMAY46GCJAFQ/
○10月7日(金曜日)
〈在日韓国人を中傷するビラを貼る目的で福岡市の商業施設のトイレに入ったとして、建造物侵入罪に問われた同市の無職男(64)に対し、福岡地裁は7日、懲役1年、執行猶予3年(求刑・懲役1年6月)の有罪判決を言い渡した。〉(読売新聞)
「安田浩一ウェブマガジン ノンフィクションの筆圧」にも、つぎの記事がある。
〈福岡ヘイトビラ事件 判決にみる「差別事件」として踏み込まない司法と「謝罪と反省」の方向の曖昧さ〉
〈今回の裁判が全国的にも注目されたのは、6月に法施行されたヘイトスピーチ解消法が同事件に一定の存在感を与えたと見られるからだ。
地元記者によれば、福岡地検は起訴時に、建造物侵入容疑という軽微な事件としては異例ともいえる“記者レク”(司法担当記者を集めた背景説明)をおこなったという。そこでは担当検事が「新法ができた情勢にも照らし、悪質と判断とした。こうした趣旨の起訴は全国でも珍しい」などと話した。
さらに論告でも検察側はこの事件を「社会全体として本邦外出身者に対する不当な差別的言動を廃絶しようとしている現在の情勢に逆行するものだ」と指摘している。
であればこそ、判決でもヘイトスピーチ問題に踏み込んでほしかった。〉
(このあとは、記事参照)
https://www7.targma.jp/yasuda/2016/10/10/post696/
これらの判決と、このツイートが、どう関係しているかを、断定できる材料があるわけではないが、こうした判決がでできた時期に、吉田氏の上のツイートがなされたというのは、これらの動きと考え合せると、気になるのである。
ところで、吉田氏には、それに先立つ10月4日に、つぎのフェイスブック投稿がある。
「HOM55」さんのツイートが、これを伝える。
山口4区から出馬した自民党の吉田真次。彼のFBで衝撃的な文言を含む投稿を発見しました。
— HOM55 (@HON5437) 2023年4月17日
「日本人客に糞尿を食べさせる人がいる国」って・・。
当時、寿司店で外国人観光客に使うワサビの多さが問題視されたので、それを念頭に置いた投稿だと思います。
この表現はあり得ないでしょ・・。 pic.twitter.com/ja1rv6xTSG
「これからは寿司職人は握る技術に加えて、顔を見てわさびの量を判断しなければならないのですね。
日本人であっても外国人であっても、多くても少なくても文句を言われるのは大変だ。
ひと言、客が言えば済むのだろうけど。
ただ、わさびが好きな外国人が多いからと、その量を多くしたことについて差別されたと憤慨することが理解できない。
日本人客に糞尿を食べさせる人がいる国ではそう思うのかもしれないが。」
前々日、この寿司屋のことで、つぎの報道があった。
「市場ずし難波店 外国人観光客に"わさびテロ"? 運営会社が事実認め釈明」
https://www.huffingtonpost.jp/2016/10/02/ichiba-sushi-wasabi-terro_n_12298186.html
〈大阪中心部の寿司店「市場ずし」で、店員が外国人観光客にわさびを大量に盛るなどの嫌がらせをしたという指摘がネット上で相次ぎ、運営会社が10月2日、公式サイトで釈明した。
問題になったのは、大阪の繁華街・ミナミにある「市場ずし」難波店。
9月ごろから、韓国のポータルサイト「NAVER」の旅行掲示板で「わさびテロに遭った」という書き込みが相次いでいた。
運営する「藤井食品」(大阪府茨木市)は10月2日、店員がわさびを多く入れていた事実を認め「海外から来られたお客様からガリやわさびの増量の要望が非常に多いため」と釈明した。民族差別的な発言については否定した。〉
この件の報道や、内外での反応を受けて、このフェイスブック投稿がおこなわれ、この件で「差別されたと憤慨することが理解できない」、そして11日のツイッターで「悪意や差別という意識がない言動に、そこまで過剰に反応することはどうなのか」と書かれるのである。
さらに「日本人客に糞尿を食べさせる人がいる国ではそう思うのかもしれないが」と。
これについては、後述。
吉田さんが安倍さん後継として立候補している山口4区では、有田芳生さんも立候補し、吉田候補との議論を望んでいるが、選挙期間最終日にいたるまで、実現していない。
有田さんは、せめて、吉田さんの意見を聞きたいと、3項目の質問状を送る。
「統一教会問題について」「北朝鮮拉致問題について」につづいて「人権問題について」。
山口4区補選。いよいよ「3日攻防」となりました。自民党の候補者は私の公開質問状に回答しませんでした。「週刊文春」の質問にも無回答。争点を隠したまま投票日に向かう。予想どおりです。 pic.twitter.com/0RSaYb5dct
— 有田芳生 (@aritayoshifu) 2023年4月20日
つぎのとおりだ。
〈貴殿は、2016年10月11日、「最近、外国人であることで差別されたという報道が目立つが、悪意や差別という意識がない言動にそこまで過剰に反応することはどうなのか。安倍政権が、移民政策を推進し、人権擁護法などを成立させるような政権でなくて本当に良かったと思う」とツイッターで投稿されています。しかし「悪意」や差別の「意識」がなくとも基本的人権を阻害する「効果」があれば差別にあたることは、わが国も加入する人種差別撤廃条約の精神から明らかです。貴殿の投稿は、人種差別撤廃条約の精神に真っ向から反するものと断じざるをえません。この件についての見解を求めます〉。
と、誠意ある回答を求めた。回答期限を19日(水曜日)までとしたが、答えはない。
この吉田さんのフェイスブックは、わたしには、よくわからない。
「これからは寿司職人は……顔をみてわさびの量を判断しなければならない」
⇒いや、顔を見てわさびの量を判断してきたことが、問題にされている。
そんなことはやめよう、という、問題の核心を全く理解していない。
「日本人であっても外国人であっても、多くても少なくても文句を言われるのは大変だ」
⇒「(事件後)難波店ではお客さま全員にわさびを別皿に分けて提供するようにしています」と、日刊ゲンダイにあるように、そうすれば、文句をいわれないのでは? 文句を言われない容易な解決策があるのに、ことさらに、差別を批判する韓国人のクレームを批判する。
「ひと言、客が言えば済むのだろうけど」
⇒こうして、問題を「客側」(差別を訴える側)にあるかのように、そらすのである。
「ただ、わさびが好きな外国人が多いからと、その量を多くしたことについて差別されたと憤慨することが理解できない」
⇒外国人には、食べられない量のわさびが乗った寿司が、一律に提供されたのである。それを歓迎する外国人もいただろうが、食べられない外国人もいた、という現実。
そういうことを、一律に、自民族にたいしてなされれば、怒るよね。自民族にたいしてなされる差別と、それへの怒りを理解できないのだ、この方は。
⇒店員の民族差別発言があった、という抗議もあったが、無視をきめこむ。
「日本人客に糞尿を食べさせる人がいる国ではそう思うのかもしれないが。」
⇒吉田氏は、こうして根拠のないガセ記事をもって、韓国人を非難する。
これは、ヘイトスピーチ解消法成立の日に、ネットに投じられた最悪の「ガセ、ヘイト」記事を、鵜呑みにした、最悪のコメントだ。
外国人といっても、民族によって好みは異なる。
そして、個人によっても、好みは異なっている。
中国人の「わさび」の量の好みの報告は、ネット上で、見られる。
そういう傾向はあるのかもしれないが、個人差もあろう。
韓国人の「わさび」の好みは、好むという人もいるが、好まない人も多い。
市場ずし難波店は、それを十把ひとからげに、外国人の好みとくくってしまった。
それに対する吉田氏のフェイスブックは、ガセ記事をもとに、韓国を「日本人客に糞尿を食べさせる人がいる国」とした。これは、ガセ記事に依拠し、根拠のない「個別事象」を、韓国人という「民族一般」に拡大している、二重の間違いをおかす発言である。
発言のレベル(性質)が、「わさびテロ」と同じに見える。より悪質にも思える。
ガセ記事による「十把ひとからげ」の乱暴なヘイトスピーチ。
ヘイトスピーチ解消法にいう「本邦外出身者を著しく侮蔑する」発言だ。
下関は、隣国である韓国・朝鮮との窓口だった。そこからは、有田さんの言うように、文鮮明も来日した。統一教会の霊感商法や、帰依した信者たちが生活と家庭を壊すまでに搾りとられた多額の財産が、韓国の教会本部に、ここを経由して運ばれてきた地でもある。多くの支援議員も生み出してきた。けれども、そこは、ゆたかな文化と人間の交流の窓口でもあった。そこは、もっともヘイトスピーチをゆるしてはならない地であるはずだ。
吉田氏は、隣国人の行動に「日本人に糞尿を食べさせる」という、根拠なき意図的な作り話を盛ってしまった。その国からの来訪の窓口である、下関という地を代表する政治家として、ふさわしいかどうかが、大いに問われる。
吉田真次氏のブログに、こういうくだりがある。
〈私は「ノイジーマイノリティに惑わされることなく、サイレントマジョリティを汲み取れ」ということを政治信条としています。〉
このことばには、発言するマイノリティを軽視する姿勢が見て取れる気がしていた。
ですが、こうも思う。
こうした、ネットの極端な右翼的なガセサイトを信じるのは、ネット世界の極右「ノイジーマイノリティ」の意向を汲み取って政治活動をしてきたということではないのか、と。
市議という立場では、日の丸掲揚、育鵬社教科書の採用など、極右派の主張の切込み隊長のようにみえる吉田氏だが、たとえば、モリ・カケ問題を、ただ根拠のない批判と言ってみたりするのをみると、根拠を示した批判がブログではなされていないようだし、地元にいながら、右派の動きを後追いするように、そうした発言がなされているにすぎないようだから、極右派の動きに呼応する若手、というのが、その役回りだったのでは、と思った。
有田さんとの議論・対話が実現していれば、吉田さんの主張が、どのくらいの深さのものかがわかっただろう。
この吉田さんのフェイスブック、ツイッターの発言は、ヘイトスピーチ解消法成立日のガセ記事を韓国人一般の属性であるかのように語る。それを、与野党間の意見の違いのあるなかで、ヘイトスピーチ解消法の成立に向けて、努力した有田さんとくらべてどうなのだろうか、ということを、今こそ考えたい。
最後にそう述べて、このレポートを終える。
※「日本人客に糞尿を食べさせる…韓国の従業員逮捕」のブログ、および吉田真次氏のフェイスブックについては、この記事にも言及がある。
https://sssooocccooo.hatenablog.jp/entry/2023/04/18/125243
※淫夢新聞のこの記事を信じてツイートした、鈴木麻理子さん(当時、日本のこころ。のち自由党)のいきさつについては、つぎのサイトがある。この件が炎上して、鈴木さんは強い批判を浴びるなか、淫夢新聞は、記事削除だけでなく、ブログを閉鎖することになる。
吉田真次候補のフェイスブックへの書き込みの、2月後の12月のことである。
https://togetter.com/li/1063084
【ちょっと驚いた】 自民党から1990年の衆議院選挙に立候補した阿部令子氏(旧大阪3区)は 統一協会の霊感商法で霊能者役をした人物だったが、 この選挙の自民党で、たった一人の女性候補者だった! このころの自民党の衆議院の女性候補者と当選者の状況は、どうだったのか。
【ちょっと驚いた】
自民党から1990年の衆議院選挙に立候補した阿部令子氏(旧大阪3区)は
このころの自民党の衆議院の女性候補者と当選者の状況は、どうだったのか。
この表題のようなことに、ネットで検索して気づきました。
え? ちょっと、ホントに?
1990年といったら、いまから33年前。
土井たか子が社会党委員長になったのが、阪神タイガース優勝の翌年1986年。
1989年の参院選で躍進し「マドンナブーム」「山が動いた」「やるっきゃない」! その翌年のこと。
もう平成になってます。自分には選挙権もありました。
それなのに、自分も投票を幾度か重ねてきたこの時期に、女性の衆議院議員がずっと、少なかったことに、いまさらだけども、びっくりしました。
しかも、自民党は、女性候補者はひとり? 落選したから、女性当選者はいなかったわけ?
ということを、調べたので、ちょっとレポートしてみますね。
さて、1980年、83年、86年、90年と、1980年代のはじめから、1990年のバブル崩壊のころまでの10年間の4回の衆議院選挙で、自民党はのべ何人の女性候補者を立て、のべ何人を当選させてきたでしょうか?
あなたの予想は?
その答えを、レポートしてまいります!
※この報告は、昨秋に書きはじめたが、書き終えていなかったものを書きついだもの。
阿部令子氏が、自民党唯一の女性候補だったことは、有田「改訂新版 統一教会とは
何か」にも書かれている。当時書いた文章のまま、以下、話をつづけます。
昨年、有田芳生さんが、阿部令子氏が旧大阪3区で1990年に自民党から立候補したいきさつについて、9月21日に大月書店から発売される「統一教会とはなにか」の新版に書いていますというツイートをしました。
それで、阿部令子氏のことを、ある方法でネット検索してみたら、この年の雑誌「財界往来」や、数年後の「赤旗」に、この選挙で自民党唯一の女性候補者だったという記載があることがわかりました。
でも、ほんとかね。自民党の衆議院議員って、200人台の後半ほどはいるはずで、候補者は300人台がいるはず。女性候補者が1人だけなんて、そんなのあり?
しかも、中選挙区制だよ、って思いました。
ネット検索でさらに追求すると…。
1)まず、ウィキペディアで、この選挙での自民党の当選者のうち、女性は「0」だと、わかりました。自民党からの立候補者は338人。当選者は275人。全員が男性♂。
2)ついで、つぎの記述を、検索で見つけました。
「女性の候補者数は66人で、前回の総選挙より31人増加した。その党派別内訳は、自由民主党1人、日本社会党8人、公明党1人、日本共産党29人、民社党1人、諸派15人及び無所属11人となっている」
(衆議院議員総選挙最高裁判官国民審査結果調 自治省選挙部 1990より)。
これで、自民党からの女性の立候補者は、統一教会の阿部令子氏の一人だけだったことが確定しました。
ついで、さらにネット検索を進めると、つぎの論文にゆきあたりました。
「衆議院議員総選挙における女性候補者」上條末夫、駒澤大學法學部研究紀要(48)、p57-104、1990-03、駒澤大学
http://repo.komazawa-u.ac.jp/opac/repository/all/16829/KJ00000099795.pdf (PDF)
この論文は、戦後の「中選挙区制・単記投票制」がはじまった、第23回総選挙(1947.4.25)から、第38回総選挙(1986.7.6)までの、衆議院総選挙における女性候補者が総覧できる。
それ以降について、筆者がしらべたこととあわせて、おもに中選挙区制の時代に、衆議院選挙の女性候補者は、各回それぞれ何名いて、当選者は何人だったかを、レポートしていこう。
この論文にある、第38回総選挙まで以後のデータを、直近の第49回総選挙(2021.10.31)まで、筆者が補った表を、このあとしめしましょう。
第41回総選挙(1996.10.21)以降は、小選挙区比例代表並立制に変わった。
それまでは、自民党では、女性候補者が1ケタどころか、第35回総選挙(1979.10.7)以降は、「1⇒1⇒1⇒0⇒1⇒2」といった、ひとつの核家族の女性の人数か、それ以下のような状態が、17年もつづいてきたことになる。
とくに、第38回(86.7.6)は、立候補者ゼロ。
男女雇用機会均等法が施行されたのが、1972年だそうで、それから14年後の、自民党が300議席をとって圧勝した選挙で、候補者ゼロ。当選機会じたいがゼロ!
社会党が敗北し、土井たか子委員長が誕生。このときの自民党は女性候補ゼロだったとは。
第41回総選挙で、やっと「10名」になって、第24回(1949.1.23)以来、ほぼ半世紀近く、47年ぶりに、2ケタの候補者になるのでした。
ちょっと省スペースでまとめたために、政党の変遷があるのを同じタテ列に書いているものがあるので、その説明をしておきます。青字の政党名のところは、複数の政党を、1つのタテ列のなかであつかっているので、ご注意ください。
つぎに表を掲載したあとで、まず、その説明をします。
左の数字が候補者数、右の数字は当選者数です。
上の表についての註釈は、このレポートの末尾にも書くが、小選挙区制のもとでの多党化以降のことだけ、ここに注記しておこう。
同じ縦軸を、複数の政党にもちいて記しているものがある。
*新進党の欄を、つぎのようにもちいた。
46回:日本未来の党、47回:生活の党
48回を、希望の党にもちいた。
*公明の41回には、新進党で当選した公明系の女性代議士数を(4)としるした。
*補欠選挙や繰上げ当選で、議員になった方もいるが、この表にはあらわれていない。
自民党は、36回(80.6.22)で、女性代議士がいなくなった。37、38、39回も、女性代議士は、出なかった。
40回(93.7.18)で、前回は無所属で落選した野田聖子さんが、自民党の公認をえて、当選。女性代議士の空白を、13年ぶりに埋める。
また、38回(86.7.6)衆院選には、自民党の女性候補さえいない状況となった。
35回(79.10.7)からは、女性候補は、ひとりだけ。
それは、誰だったか?
山口シズエさんだった。
第22回総選挙で、日本社会党から東京1区で初当選。31回(67.1.29)まで、連続10回の当選をつづける。
Wikipediaによると、
「1967年1月の第31回総選挙で党内派閥抗争のもつれから選挙違反を告発される。結局不起訴となったが、党に不信感を抱き同年5月に社会党を離党。無所属を経て、同年9月に自由民主党に入党して話題を呼んだ」らしい。
以降は、自民党で、32回(69.12.27)では当選。だが、33回(72.12.10)は落選。
34回(76.12.5)、35回(79.10.7)では当選。
この35回で、自民党の女性候補は、山口さんだけになっていた。
36、37回は、唯一の自民党女性候補であったが、落選し、引退する。
1979年の35回から、1990年の39回に阿部令子が自民党の公認をえるまで、11年間、もとから自民党だった候補で、自民党の女性候補となった方は、いなかったことになる。
そんなところに、選挙期間中に自民党公認となったのが、阿部令子、そのひとだった。
国会図書館の書誌情報によると、「週刊文春」1992年12月10日号に、
「渡辺ミッチーの秘蔵っ子 阿部令子・大阪三区--浪花のマドンナ候補と統一教会の密着度 / 有田芳生と本誌特別取材班 / p41~49」
という記事が出たらしい。
また、
〈定員5人に5党が収まる「無風区」にマドンナ旋風を巻き起こしたのは、引退した村上弘前共産党委員長のあとを継いだ菅野悦子さんと、全国でただ1人の自民党公認女性候補となった阿部令子さんの2人。もっともお2人とも「マドンナ対決」と呼ばれることがお気に召さないようで、表面上は「うちは地盤を引き継いでの立候補。ライバルではありません」(菅野陣営)、「支持層が違います。気にしていません」(阿部陣営)と、冷静を装った〉
なんて記事も、1990年の「アサヒグラフ」に載ったもよう。
当時は、なんであれ、女性どうしの選挙でのたたかいは、マドンナ対決だったんだろうか。
このひとが、統一教会の霊能者役だった。
当時の記事もある。
「自民党代議士秘書・阿部令子氏--経歴の空白は霊感商法元霊能者!? (総選挙特集--ただものではない候補者たち)
雑誌記事 <Z23-7> 掲載誌 Asahi journal / 朝日新聞社 [編] 31(57) 1989.12.29 p.p14~16」
この件については、やはり、有田芳生さんの「改訂新版 統一教会とは何か」(大月書店)をみるのがよさそうだ。
同書には、被害者の証言や、全国から動員された信者たちによる選挙活動のありさまが、書かれている。
「検証・統一教会=家庭連合 霊感商法・世界平和統一家庭連合の実態」山口広、緑風出版、2017
にも、1990年衆院選での統一教会の自民党(一部、民社党)候補者への応援配置の実情にふれられているというが、未読である。
「マルエス作戦」というらしい。
この報告は、ただ、ここまでにしておく。
最後に、有田芳生さんの対抗馬になっている吉田真次さんだが、政治のキャリアをはじめたのが、大阪府議会議員だった、井上哲也氏の秘書をつとめたことだったという。
そこから見出されて、下関市議会議員になったと、あるのだが、この井上哲也さん回りも、なんだか、いろいろあった世界みたいなんですね。
阿部令子氏の旧大阪3区が、吹田や豊中や摂津といったところにあたる。
井上哲也氏は、ちょうど、この地域の政治家。
井上一成の甥だという。井上一成は、社会⇒民主⇒自由⇒保守⇒自民と、渡り歩いた政治家だ。
自民からも衆院選に出たことがある。
井上哲也氏は、府議2期で、自民から維新に転じた。維新の吹田市長も1期つとめる。
Wikipediaをみると、維新議員の例にもれずというより、そのなかでも、不祥事が多かったように見える。
秘書には、こんなひともいたという。
「元秘書に関する報道
2015年3月13日、衆議院議員(当時)の上西小百合が衆議院本会議を欠席し、翌14日と15日に公設第一秘書の男性と不倫温泉旅行に出かけていたなどと週刊誌で報じられた際、この男性秘書が記者を恫喝し、「オラオラ系秘書」として話題になった。
この秘書は、もともと井上の府議時代の私設秘書で、市議時代に後援企業の電気設備会社から派遣され運転手を兼ねて選挙応援を行って以来の腹心の部下となっていた。この後援企業が不祥事「異例の単独随意契約」の会社だった。」
吉田真次さんも、同様と言いたいわけではないが、いろいろありそうなところを、政治活動の出発点にしたひとなんだと、思った。
このレポートは、とりとめもなくなったが、なんだかいろんなことが考えられそうなデータだと思って書いた。
ちょっと思いついたことがあって、その前段の意味で、じつは上のことを書いた。
なので、この続編を、近く、書くかもしれない。
末尾の註釈。
表の38回までは、前記の上條末夫「衆議院議員総選挙における女性候補者」によった。
そこには、以下の注記がついている。
〇「自民」には自由民主党のほか第27回までは日本自由党、民主党、国民協同党、民主自由党、自由党、改進党、協同党、日本民主党を含む。
〇「社会」には日本社会党のほか第27回までは社会革新党、労働者農民党、右派社会党、左派社会党を含む。
この注記を転記するにとどめて、この報告を終わりたい。
山口県の第1の都市・下関。 下関市の人口減少は、2015~2020年で、人口20万人台の都市のうちでワースト3位だった。 人口の社会増減が、地方創生とアベノミクスの成功の指標であるなら、 下関市の人口減少は、安倍晋三首相の地元でのそれらの失敗を物語る。
山口県の第1の都市・下関。
下関市の人口減少は、2015~2020年で、人口20万人台の都市のうちでワースト3位だった。
人口の社会増減が、地方創生とアベノミクスの成功の指標であるなら、
下関市の人口減少は、安倍晋三首相の地元でのそれらの失敗を物語る。
◆安倍晋三首相、地方創生の成功事例として、江津市の人口の社会増を、施政方針演説(2020年1月)でとりあげる。
2020年1月20日、安倍晋三首相は、地方創生政策の成功事例として、島根県江津市をとりあげました。
「東京から鉄道で7時間。島根県江津市は「東京から一番遠いまち」とも呼ばれています。20年以上、転出超過が続き、人口の1割に当たる2800人が減少した町です。
しかし、若者の起業を積極的に促した結果、ついに、一昨年、転入が転出を上回り、人口の社会増が実現しました」
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2020/0120shiseihoushin.html
この発言については、政治学者・菅原琢氏がその誤りを明晰に論証しています。
つぎのブログ記事です(国会議員白書ブログ2020.1.28)。
「安倍首相演説:島根県江津市の転入が増えたのは若者の起業促進策が成功したからでなく〇〇〇〇のため」
http://blog.sugawarataku.net/archives/202001-1.html
「政府統計を分析すれば江津市において若者の起業促進が社会増をもたらしたと述べることはできないことがわかります。以下、これを3つの図表により指摘しています」
というものです。
これと同様の分析を、筆者もブログに書いています。
社会増をもたらした、ある高校の寄宿生たちの人口の把握の過程に、さらに統計から迫ったものです。
こちらをお読みいただけるなら、要旨から先に読むのがいいかもしれません。
よろしかったら、菅原琢氏のブログだけでも、お読みになると、この発言の誤りを、すぐに、おわかりになると思います。
そんなふうに、この安倍晋三首相の発言は、眉唾ものなのですが、ここでは、安倍首相が、人口の社会増減を、地方創生とアベノミクスの成功の指標として、とりあげていることに注目したいと思います。
そこで、目を転じて、安倍首相の地元・下関市では、安倍首相の第2次政権以降、どういう人口動態をしめしたか、をみていくことにしましょう。
◆下関市の人口減少
まず、下関市の人口減少は、2015年と2020年の、国勢調査の「結果の要約」の3ページ目にある「表 人口増減数の多い市町村の人口及び人口増減数」で、取り上げられています。
それぞれの表の「人口減少数」の部分を、つぎにしめします。
引用元のPDFは、つぎのとおりです。
減少率は、引用者が計算しました。
https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2020/kekka/pdf/summary_01.pdf(2020年)
https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2015/kekka/kihon1/pdf/youyaku.pdf(2015年)
●人口減少数の多い市町村の人口及び人口減少数 (2015年~2020年) |
|||||
順位 |
市町村 |
2020.10.1 |
減少数 |
減少率 |
2015.10.1 |
1 |
939029 |
-22257 |
-2.3% |
961286 |
|
2 |
789275 |
-20882 |
-2.6% |
810157 |
|
3 |
409118 |
-20390 |
-4.7% |
429508 |
|
4 |
388078 |
-18508 |
-4.6% |
406586 |
|
5 |
332931 |
-17306 |
-4.9% |
350237 |
|
6 |
251084 |
-14895 |
-5.6% |
265979 |
|
7 |
214592 |
-13960 |
-6.1% |
228552 |
|
8 |
255051 |
-13466 |
-5.0% |
268517 |
|
9 |
826161 |
-13149 |
-1.6% |
839310 |
|
10 |
275192 |
-12456 |
-4.3% |
287648 |
|
11 |
243223 |
-12216 |
-4.8% |
255439 |
|
12 |
神戸市 |
1525152 |
-12120 |
-0.8% |
1537272 |
13 |
693389 |
-11600 |
-1.6% |
704989 |
|
14 |
282693 |
-11554 |
-3.9% |
294247 |
|
15 |
1463723 |
-11460 |
-0.8% |
1475183 |
|
16 |
326545 |
-10645 |
-3.2% |
337190 |
|
17 |
111299 |
-10626 |
-8.7% |
121925 |
|
18 |
174508 |
-10546 |
-5.7% |
185054 |
|
19 |
329306 |
-10299 |
-3.0% |
339605 |
|
20 |
165077 |
-9665 |
-5.5% |
174742 |
●人口減少数の多い市町村の人口及び人口減少数 (2010年~2015年) |
|||||
順位 |
市町村 |
2015.10.1 |
減少数 |
減少率 |
2010.10.1 |
1 |
961286 |
-15560 |
-1.6% |
976846 |
|
2 |
429508 |
-14258 |
-3.2% |
443766 |
|
3 |
147214 |
-13612 |
-8.5% |
160826 |
|
4 |
265979 |
-13148 |
-4.7% |
279127 |
|
5 |
57797 |
-13081 |
-18.5% |
70878 |
|
6 |
268517 |
-12430 |
-4.4% |
280947 |
|
7 |
287648 |
-11782 |
-3.9% |
299430 |
|
8 |
406586 |
-11739 |
-2.8% |
418325 |
|
9 |
228552 |
-11421 |
-4.8% |
239973 |
|
10 |
704989 |
-11208 |
-1.6% |
716197 |
|
11 |
121925 |
-10004 |
-7.6% |
131929 |
|
12 |
64988 |
-8601 |
-11.7% |
73589 |
|
13 |
158114 |
-8418 |
-5.1% |
166532 |
|
14 |
185054 |
-8075 |
-4.2% |
193129 |
|
15 |
315814 |
-7786 |
-2.4% |
323600 |
|
16 |
275133 |
-7541 |
-2.7% |
282674 |
|
17 |
339605 |
-7490 |
-2.2% |
347095 |
|
18 |
岩国市 |
136757 |
-7100 |
-4.9% |
143857 |
19 |
114714 |
-6990 |
-5.7% |
121704 |
|
20 |
129652 |
-6971 |
-5.1% |
136623 |
人口20万人台の都市をくらべると、函館市・呉市・下関市の順で、人口減少率が高いことがわかります。
2010年から2020年までの、この3都市の人口減少数と減少率を、つぎにまとめます。
●人口減少数の多い市町村の人口及び人口減少数 ──人口20万人台の3都市を比べてみる (2010年~2020年) |
|||||
順位 |
市町村 |
2020.10.1 |
減少数 |
減少率 |
2010.10.1 |
1 |
251084 |
-28043 |
-10.0% |
279127 |
|
2 |
呉 市 |
214592 |
-25381 |
-10.6% |
239973 |
3 |
255051 |
-25896 |
-9.2% |
280947 |
2020年までの10年をみれば、下関市は、人口20万人台の都市のうちで、人口減少数は2位、減少率は3位だったのです。
安倍首相が、施政方針演説で、人口の社会増を、地方創生とアベノミクスの成果をあらわす実績として紹介した考え方によるならば、安倍首相の地元である下関市は、これらの指標がよくないことから、地方創生やアベノミクスの成果からは、とりのこされてきたと言えそうです。
そうした現実から、下関市をとりもどすことが、必要なのではないでしょうか。
いま、下関市をふくむ衆議院山口4区の補欠選挙が行なわれていますが、そこでは、立憲民主党の有田芳生候補が、アベノミクスの検証を、政策の3つの柱の2番目にあげています。
人口20万人台の都市のなかでも、人口減少が著しかった下関市でこそ、この検証をもとに、政策転換がなされなければならないはずです。
第2次安倍政権は、2012年12月26日から、2020年9月16日まででした。
つぎに、下関市での、2013年1月1日から2021年1月1日までの人口増減を、しめします。
人口の社会減が多くあったことがわかります。
●第2次安倍政権がはじまってからの 下関市の人口増減 |
||||
日付 |
人口 |
減少数 |
自然減 |
社会減 |
2013.1.1 |
275756 |
-2371 |
-1554 |
-817 |
2014.1.1 |
272923 |
-2833 |
-1729 |
-1104 |
2015.1.1 |
270447 |
-2476 |
-1665 |
-811 |
2016.1.1 |
267995 |
-2452 |
-1718 |
-1164 |
2017.1.1 |
265121 |
-2874 |
-1887 |
-987 |
2018.1.1 |
262064 |
-3057 |
-2085 |
-972 |
2019.1.1 |
259208 |
-2856 |
-2046 |
-810 |
2020.1.1 |
256532 |
-2676 |
-2109 |
-567 |
2021.1.1 |
254364 |
-2168 |
-2301 |
-1043 |
*2016.1.1と2021.1.1は、国勢調査の翌年のため、合計が合わない。 *人口の自然減と社会減の統計が、1月1日時点で集計されているため、この表では、1月1日の時点の人口の動きをしめした。 |
下関市の人口減少を取り上げた、地元の「長周新聞」の記事がありましたので、最後に、そのうちの2つを、そえます。
「深刻さ増す下関市の人口減少 戦後初の25万人台に突入 急がれる少子化対策 2018年11月10日」
https://www.chosyu-journal.jp/yamaguchi/9853
「全国ワースト4位の人口減少 寂れるばかりのお膝元・下関 急ピッチで進む学校統廃合 2020年9月12日」
https://www.chosyu-journal.jp/yamaguchi/18447
(付記1)安倍晋三首相退陣後も、下関市の人口は、ひきつづき減少している。
の人口 |
||
日付 |
人口 |
減少数 |
2020.10.1 |
255051 |
-1987 |
2021.10.1 |
251716 |
-3335 |
2022.10.1 |
248236 |
-3480 |
2023.3.1 |
246646 |
-1590 |
(付記2)長門市と岩国市の人口減少
人口減少が顕著なのは、下関市だけではありません。下記は一例。
●長門市(山口4区)と岩国市(山口2区)の 人口減少 |
||||
市町村 |
2020.10.1 |
減少数 |
減少率 |
2010.10.1 |
255051 |
-25896 |
-9.2% |
280947 |
|
32356 |
-5993 |
-15.6% |
38349 |
|
岩国市 |
129125 |
-14732 |
-10.2% |
143857 |